6月誕生・キー局「3人の新社長」の経歴と実力

誰が名社長と呼ばれるか

新社長の「華麗な経歴」

6月は株主総会の集中期。各企業で取締役人事が行われる。在京民放キー局でも新社長が3人生まれることが内定した。

社長となるのは、日本テレビの小杉善信副社長(65)、テレビ朝日の亀山慶二専務(60)、フジテレビの遠藤龍之介専務(62)。世間の注目を最も集めているのは作家の故遠藤周作さんを父に持つ遠藤氏のようだが、民放を含めたエンターテイメント界で一番話題なのは小杉氏だ。

小杉氏が社長候補と呼ばれるようになってから久しい。ほかの業種と同じく、民放の社長就任の理由はさまざまだが、この人の場合は実力でその座を掴んだ形。テレビマンなら誰でも羨むような輝かしい実績が数々ある。小杉氏の存在なくして現在の日テレの隆盛はないと言っても過言ではないくらい。このため、エンタメ界では「小杉社長内定」が話題なのだ。

日テレの情報クイズバラエティーの原型をつくった「クイズ世界はSHOW by ショーバイ!!」(1988~96年)の演出を手掛けたのはこの人だし、知識量を問わないクイズという新しいジャンルを切り拓いた「マジカル頭脳パワー!!」(1990~99年)のプロデューサーも務めた。どちらの番組も20%を軽く超す高視聴率を得た。

 

日テレを象徴する番組「24時間テレビ 『愛は地球を救う』」を救ったのも小杉氏である。1978年に始まった「24時間テレビ」は90年代前半、マンネリに陥ってしまい、ピンチに立たされた。そこで小杉氏は「チャリティーマラソン」と銘打ったウルトラマラソンを取り入れる。なるほど、誰かが番組の最初から最後まで走ると、動向が気になる。番組に縦軸も生まれる。92年のことである。初代ランナーは間寛平(69)で、「マジカル頭脳パワー!!」のレギュラー解答者だった。

理論派でもある。その気になったら、明日からでも大学で「テレビ論」を造作なく教えられるだろう。その言葉には、番組制作の経験がないメディア学者とは比べものにならないほどの説得力がある。また、分かりやすい。

たとえば、テレビ界には「編成」という言葉ある。そして、編成部員や編成部長、編成局長が存在する。では、編成とは具体的に何か? そう問われたら、おそらく新聞社の放送担当記者は大抵が返答に窮してしまうはずだし、テレビマンですら分かりやすく説明するのは難しいのではないか。

それを小杉氏はこう説明してくれた。編成担当の常務執行役員を務めていた7年前のことである。

「(局の)タイムテーブルは商店街のようなもの。それぞれの番組は商店。同じような商店がいくつも並んでしまっては、商店街に人が集まりません」

商店街の街並み(タイムテーブル)を整えるのが、編成部員の仕事なのだ。

振り返ると、小杉氏から初めて話を聞いたのは四半世紀以上前のこと。随分と昔だが、そのときの言葉も興味深かったので、今でもよくおぼえている。最終回の視聴率が37・2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区、以下同)に達した連続ドラマ「家なき子」(1994年)のチーフプロデューサーを小杉氏が務めていた当時のことである。

「録画で見てもらったってダメなんです。『次が見たい』『必ず見たい』『早くみたい』『今見たい』と思わせないと。ドラマは作品ではなく、番組なんですから」

随分とストレートな物言いにやや面食らったが、小杉氏の言うとおり、民放という業種は視聴率を競っているのである。それを隠しても意味がない。「今見たい」と思わせるストーリーに徹したからこそ、驚異的視聴率がマークできたのだろう。実際、あのドラマは次回の展開がどうなるか気になって仕方がない展開になっていた。