カリスマホストが赤ちゃんを育てる『キッズファイヤー・ドットコム』を、現在ヤングマガジンで連載中の作家、海猫沢めろんさん。自身も小学生の子どもを育てている真っ最中だ。

ところで、みなさん子供のころになにかしら習い事をした人は少なくないのではないだろうか。そして、いまお子さんがいる方々は「子供の習い事」に迷ったこともあるのでは……?ということで、自身の息子が3歳になったときに思い切り焦って迷っためろんさんに、実体験を語っていただこう。

海猫沢めろんさん連載「パパいや、めろん」こちら

一刻も早くやらせなきゃ!

子供が3歳の頃、ぼくは焦っていた。

一刻も早くやらせなくてはいけない! 今すぐにでも! 今日にでも! とにかくやらせなくては始まらない! なにを!? 決まっている。

習い事」である。

育児のことがわからずひたすらマニュアルを読み漁っていたぼくは、「習い事は3歳から!」とか「絶対音感をつけたいなら早めに!」「英語のネイティヴ発音は子供の頃にしか身につきません!」とかいう言葉を鵜呑みにして、とにかく「早く習い事させないと手遅れになる!」という焦りを感じていた。

勉強だけではこの格差社会を生き抜けない。芸は身を助ける。世界にひとつだけのオンリーワンな才能を開花させるためにスキルを与えねば。我が子に眠った天才性を開花させてこの腐った世界を革命するイノベイターに育てあげなくてはならない。そのためには今すぐに「習い事」だ!

……というわけで新学期が始まり、そろそろ新たな環境にもなれてきたみなさま、いかがお過ごしだろうか。今回はみなさんも大好きであろう、夢と希望に満ちた「習い事」について、夢も希望もない話をしてみたい。夢と希望を求める人はいますぐディズニーランドやジャニーズコンサートにでも行ってください。

希望は人を狂わせる

冒頭で述べたように、子供が3歳の頃、ぼくは焦りを感じていた。
3歳といえばそろそろ子供に人格らしきものが備わり、

あれ?この積木アートぽくない?

なんだか打楽器のリズムにアフリカの血を感じる

この絵!色彩!大人には書けない線……ギフト?

電車の名前をこんなに覚えるなんて神

と、いろいろと親が勘違いし始める頃である。とくに何の才能も発揮していなくとも

「きっとまだ才能が眠っているに違いない!」

とむしろ希望を持ってしまう。
もちろんぼくは常に冷静なのでそこまで親馬鹿ではない。

「とりあえずこの子になにか天才的才能があったら早めに伸ばさないといけないので、まずはあらゆることをやらせてみて才能の片鱗を確認しておかなくてはならない」

と冷静に考え、手当たり次第に体験教室に行ってみた。「習い事ガチャ」を回し始めたのである。

囲碁、ピアノ、ヒッポ(多言語)、英会話、水泳、サッカー……オンリピックを目指すならレアなものがいいのではないかと考え、フェンシング教室にも問い合わせた(年齢的に無理だった)。そこではっと正気にかえった「習い事」が途中で「オリンピック」になっている! 怖い。

オリンピック目指すならレアなもの……あれ、スタート間違ってる? Photo by iStock

そう、「希望」は人を狂わせる。あわよくば……もしかしたら……人は可能性について考え始めると冷静さを失う。希望や欲望や課金ガチャに弱い人間たち。そんな人間を私は愛しています。