産婦人科医として痛感した
緊急避妊薬の入手のしづらさ

現在の日本の医療体制において、主に産婦人科医による対面診療のマンパワーのみで、緊急避妊薬を必要とするすべての女性に早急に入手させることは困難である。私自身、地方の総合病院に勤務していたときに、それを痛感した。

休日の勤務は、院内に産婦人科医は私一人だ。その日も、朝から分娩や緊急帝王切開になる妊婦さんの対応などで忙しかった。そこへ看護師から「先生、救急外来に緊急避妊を希望の方がいらしてます」と電話が入るが、他の仕事に追われ、「緊急避妊なら、待ってもらってて」と言うしかなかった。

結局、私の手があいたのは3時間後。コンドームの脱落による避妊の失敗をした20代のカップルが、休日で自宅近くの医療機関は処方してくれるところがなかったため、3時間車を飛ばして来院し、顔面蒼白で不安な表情で待っていた。3時間待たされ、3時間かけて帰る、それでも無事に緊急避妊薬を手にして安堵した彼らの表情は忘れられない。「ここまでたどり着いてくれて本当によかった。入手しづらい状況でごめんなさい」という気持ちになった。

緊急避妊薬を求める女性たちは、藁をも掴む思いでやってくる。恐怖、罪悪感、絶望感、そしてタイムリミットに間に合うだろうかという焦り……。みな共通しているのは、どうしようもない妊娠に対する不安の中にいるということ。「緊急避妊薬」という名の通り、緊急で内服が必要であるにも関わらず、入手しづらい日本の現状は一刻も早く改善しなければならない。

9割のパブコメ賛成だったのに
認められなかったOTC化

こういった現状を打破しようと、2017年に緊急避妊薬のスイッチOTC(Over The Counter)化(医師の処方箋は必要なく、薬局で購入できる市販薬化)の検討会が医師や薬剤師らも含め、厚生労働省で行われた。パブリックコメントでは、9割が緊急避妊薬のOTC化に賛成だった(348件中、賛成が320件、反対は28件)。しかし、「医薬品による避妊を含め性教育そのものが遅れている」「安易に販売される懸念がある」などを理由に、OTC化は認められなかった。

日本では、OTC化すると、法律上、約3年後にはネット販売や代理人購入が可能となることや、海外のように薬局で薬剤師に相談し、説明を受けた上で購入するBPC(Behind The Pharmacy Counter)という仕組みや習慣が確立されていないことも理由として挙げられ、決して簡単な道のりではないことが明らかになった。