ソフトバンクグループ創業者・孫正義は「フォーブス」誌の日本長者番付の常連だ。
2017年からは連続で第1位につけている。グループの時価総額によって順位が変動することもあるだろうが、息の長いIT長者が少ない日本にあって異色の存在である。
彼は19歳のとき、カリフォルニア大学バークレー校に留学し、経済学を専攻した。
食事と睡眠以外のすべての時間を勉強に使っていたが、時期が悪かった。日本の父が病気で倒れてしまい、家族から送金してもらっていた毎月20万円の留学資金が途絶える恐れが出てきたのだ。
最初から留学には無理があったのだが、いよいよ自分でお金を稼がなければ家族に迷惑をかけてしまう。だが、勉強漬けの孫にはアルバイトに使う時間はなかった。
普通の人なら、勉強時間を削ってアルバイトをしたはずだ。
だが彼は、「1日に5分だけ働いて、ひと月に100万円以上稼ぐ方法はないものか?」と本気で考えた。友人は驚いて「バカな考えは捨てて、カフェでアルバイトしたほうが良い」とアドバイスしたが、孫は折れず、実用化を視野に入れた発明をすれば、それを企業に買ってもらえると思いついた。
そして毎日5分だけ使って、1日にひとつ発明をする習慣を自らに課した。
この習慣には、考える時間は毎日5分に限ること、5分考えてもアイデアが無ければ、その日は諦めることという2つの原則があった。毎日5分の発明を続けるうちに、発明方法にも法則が見えてきた。孫はそれを3つに分類した。
第一に「問題解決法」。その名のとおり、すでにある問題を見つけて、その解決法を考える方法だった。
第二に、「水平的思考法」。たとえるならば、大きなものを小さなものに、小さなものを大きなものに、四角いものを丸いものに変える方法だ。
第三は、「強制結合法」。ラジオとカセットを組み合わせると、ラジカセになるように、既存のものを組み合わせる方法だった。「強制結合法」はもっとも多く活用され、孫はこのために300枚ものカードを作って、そこからランダムに2枚選び、結合させてみたりしたという。