2019.05.28
# 物性

新しいキログラムの定義は、この語呂合わせで覚えよう

「物理法則」による新定義とは? 中編
山根 一眞 プロフィール

国際単位系で初の日本の貢献

キログラムの定義改定が語られるようになったのは、国際キログラム原器の質量に「1億分の5」のゆらぎが出ていることがわかったからだった。

質量の基準、国際キログラム原器は高さと直径が約39mmの白金とイリジウムの合金製で、1889年の第1回国際度量衡総会でキログラムの定義とすることが承認された。

1889年(明治22年)は、日本では大日本国憲法が公布された年だが、パリではエフェル塔が建設された年だ。エッフェル塔は当時の鉄の技術の粋と言われたが、キログラム原器の製造はイギリスのジョンソンマッセイ社が真空冶金技術を駆使して製造した。当時の金属精錬技術の粋が英仏で同時に誕生したことになる。

このキログラム原器は、数万年過ぎても質量が変化しないと言われていたが、100年目にしてその神話が崩れた。そこで、キログラム原器という「物」に代わって、物理法則による新定義が必要だという認識が広まったのだ。

日本の計量研ではアボガドログループを立ち上げたが、目指したのはキログラム原器の「1億分の5」を超える精度だった。そのデータを得る仕事はきわめて難易度が高く、当時の関係者は「私たちが生きている間は無理、あと100年はかかるだろう。キログラムの定義改定は夢の技術だ」と語っていたという。

だが科学技術の進化は著しく、半導体の集積度は上がり、原子1個を扱うデバイスも登場したきた。「1億分の5」のゆらぎがある「キログラム原器」を質量の基準としていたのでは、今後のイノベーションは望めない。大きな環境問題となっているPM2.5は1粒が20ピコグラムといわれるが(1ピコグラムは1兆分の1グラム)、今の技術ではこの微粒子1粒の質量が測れない。微小質量が測れるようになれば微小な力、トルクも測定可能になり、原子レベルで設計した極小モーターも登場可能となるはずだ。

アボガドログループは、そういう時代の期待を背に奮戦、30年目にして達成を果たしたのだ。

「今回、キログラムの定義改定に貢献できた国、最終データを出せたのはアメリカ、カナダ、ドイツ、フランス、そして日本の5ヵ国だけでした。しかも、国際単位系(SI)で日本が貢献できたのはキログラムが初めてなんです。それは、40年前からの中山さんの研究、技術ノウハウの蓄積があったからこそでした」

次回、後編はこちら!

 

新しい1キログラムの測り方
科学が進めば単位が変わる

臼田孝

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