2019.05.28
# 物性

新しいキログラムの定義は、この語呂合わせで覚えよう

「物理法則」による新定義とは? 中編
山根 一眞 プロフィール

計量研究所での出会い

大火災に見舞われたパリのノートルダム寺院から西に約10km。

セーヌ川に面したセーヴルにある国際度量衡局(BIPM)では、5月20日を前にして、キログラムの新定義を司る質量関連量諮問委員会(CCM)の本会議が開催。それに出席した藤井さんが、BIPMの写真を送ってくれた。引退した国際キログラム原器は、ここの地下室で130年間、安置されてきたのだ。

【写真】国相度量衡局
  パリ近郊の国際度量衡局。BIPMは「Bureau international des poids et mesures」の略 写真:藤井賢一

藤井さんがこの仕事に取り組むことになる運命的なきっかけは、1983年夏、慶応義塾大学工学部の大学院時代の時だった。産総研・計量標準総合センターの前身、通商産業省工業技術院計量研究所を就職面談で訪ねた際、所内の食堂で偶然、すでにキログラムの定義改正の取り組みを始めていた研究者、故・中山貫さん(後、首席研究員)と同じテーブルに座ったのだ。

「中山さんは日本で最初に原子と原子の間隔をX線を使い精密に測る研究をしていた方です。『キログラムの定義は100年変わっていないが、原子の数を精密に測れば定義を変えることができるんだよ』と聞いて、面白いなと思い、このこともあって計量研に就職したんです」

「計量研に就職して5年目の1988年、精密なシリコン球を精密に測定して正確なアボガドロ定数を得ようと中山貫さんを中心とするアボガドログループが立ち上がり、その研究に加わりました。これが、およそ30年にわたる私のキログラムの新定義=アボガドロ定数を求める人生の始まりでした」

【写真】1990年当時のアボガドログループと計量研型原器用天びん、X線干渉計の調整をする中山さん
  上・ 1990年当時のアボガドログループ。左から2人目が中山貫さん。右が藤井賢一さん。下左・計量研型原器用天びん。下右・X線干渉計の調整をする中山貫さん。出典:「国立科学博物館ニュース」1990年2月号、第250巻

シリコンの単結晶ではシリコンの原子と原子の間隔は均一であるため、その間隔をX線で測り、また球の体積を精密に測れば、計算で原子の数がわかり、アボガドロ定数を得ることができる。しかしそのためには、X線干渉計の信じがたいほど精密な角度制御が必須。それは、地球から月面に残したアームストロング船長の足跡のサイズがわかるほど精密な角度制御が求められていた。

「アボガドロ定数は、超正確に原子数を数えることで得られますが、それは重力波の観測に匹敵するほど厳しい、難しい技術が必要だったんです」

関連記事