「地方銀行」という構造不況業種はもうこのままでは生き残れない

環境変化を理解すれば転換の姿もわかる
高田 創 プロフィール

地域銀行の「地域商社化」とは

第3は、新たな分野へのフロンティアを求めた転身である。筆者は金融機関のビジネスモデルに関するコンセプトとして「川上投資」、「商社化」、「金融のリアルビジネス化」の概念をストーリーラインに掲げてきた。

先の図1にあるように、2000年度以降、事業会社からの受取配当金や持分法による投資損益は増加している。資金供給者の側から見れば、出資機能や事業投融資のウェイトが高いビジネスモデルの可能性が生じたことになる。

事業会社の配当は、バブルのピークの90年前後では5兆円なかったが、2017年度は22兆円を上回る水準まで上昇している。

 

もともと日本の主力銀行の貸出は、「疑似エクイティ」とされて、エクイティ性(投資的性格)を帯びており、特に、市場調達が出来ない株式非公開企業や事業にとっては、この分野専門の投資機能であるプライベートエクイティの性格を有していた。

今は、超低金利状況でクレジット・スプレッド(調達と貸出の金利差)も縮小を余儀なくされ、事業向け貸出のリスク・リターンに見合うスプレッド(利ざや)が確保できない状況にある。

また銀行は貸出では、企業が苦境になれば損失を負うが、企業価値が向上しても、そのメリットを確保できない。従来、そうした「川上投資」のメリットの可能性は株式保有で確保していたが、持ち合い解消を強いられる中で、そうした手段も限られるようになってきた。

このような日本の銀行がもっていた企業や事業へのスタンスは、貸出といった単なる資金の供給ではなく、エクイティ(資本的性格の資金)投資家として事業を育成する「リアルビジネス」への投資と言ってもよい。企業と共に歩み、企業経営そのものを改善するという取組みである。

地域銀行の多くはかつて地元の産業資本を背景に設立されただけに、創業の原点に戻ると考えることもできる。今や、地域金融機関に限定した株式の保有規制緩和論が生じるのも、地域銀行を構造不況とした中で、新たな舞台を用意する産業政策の1つとして考えることもできる。

今日、地域銀行では、預金は集まり過ぎるほど集まっているので、資金繰りには問題がない。すぐにはリスクが顕現化しないだけに、経営者は悪く言えば問題の先送りも可能だ。20年前の不良債権処理時のような急性期症状ではないが、収支環境不全の慢性期病にある。こうした環境下では、従来のビジネスモデルを超えることが必要になる。

そこで地域銀行は、「地域商社」の機能等、地域のニーズをまとめるネットワーク化、地域資金の有効活用、つまり金融の「エコシステム」の実現に目を向けた、新たな業務分野への転出も必要になる。

地域においては、高齢化に伴う世代間仲介の必要性拡大、企業オーナーの事業承継ニーズといった課題が拡大しており、こうしたニーズへの対応は、従来の預貸中心の商業銀行モデルでは十分に対応できない。

地域銀行が中心となって、これらの課題のソリューションに向けたバリューチェーンを構築する。そのことで地域での持続性のある金融モデルを構築することも可能となる。

構造不況であれば、業態転換を意識するほどの変革が必要になるのは、戦後の産業政策の歴史が語る点でもある。今や、地域銀行にとって戦後モデルの転換、新たな潮流に向けた大きな発想の転換や変化への覚悟が求められている。

編集部からのお知らせ!

関連記事