「もっと演じたい」ショーケンが貫いた、生き抜くという矜持

昭和と平成を駆け抜けたスターの最後
週刊現代 プロフィール

自分なりの安楽死

撮影は無事に終わった。だが、その間にがんは急速に進行し、もはや手の施しようのない状況になっていた。

〈病を患ったことは、もちろん不愉快だし重く苦しいことだ。けれども、これもまた私の人生における難関だと考えている。悔いのない人生を送ることで難関を乗り越える。だから何がなんでも治そうとは思わない。病を抱えたままでいい。

一日一日を大切に生きようと思った。「大切に生きる」というのは、必死で勉強することでもなければ、心を入れ替えて暮らすことでもない。

ただ、一日をゆったりと過ごす。怠惰に暮らすわけでもなく、お迎えが来るのであれば、それに逆らわないということだ〉

 

死を間近にした萩原さんは、自分なりの「安楽死」を夢想するようになる。

〈私の言う安楽死とは、自分が逝くとき、逝った後のことを含めて不安に陥らず、心安らかなまま人生の幕を閉じることを指している。

世間は有名人の死に際し、最初はその業績を懐かしみ、たたえはする。けれども、やがて血縁や相続をめぐって取り沙汰し、没後の魂を汚すことさえある。スキャンダルの標的にされ続けてきた私の場合、そんな「その後」が容易に想像できる。

それはどうしても避けたいと思った。これまで懸命に私を支えてくれた妻が苦労しないための準備をしておきたい。それが最後の務めだと思っている〉

高橋是清役として出演する大河ドラマ『いだてん』が遺作となった。

〈少しベルトをきつく締めるようスタイリストに伝える。妻はお腹を圧迫することをしきりに心配したが、お腹を締めなければ、せりふに力を込めることはできない〉

入院先の病院からなんとか帰宅できた翌日、萩原さんは自室で懸命に芝居の稽古をしていた。亡くなる8日前のことである。

昭和と平成の時代を駆け抜けたスターは男として、夫として、俳優として、最期まで生き貫く矜持を見せて逝った。

「週刊現代」2019年6月1日号より

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