「もっと演じたい」ショーケンが貫いた、生き抜くという矜持

昭和と平成を駆け抜けたスターの最後
週刊現代 プロフィール

心の叫びがせりふになった

抗がん剤の副作用でかすれた声も演技に生かした。

〈『不惑のスクラム』では回を経るごとにだんだん声質を変え、私が出る最後のシーンは、かなりガラガラ声になっている。それが独特の効果を挙げている。

人の発する言葉は一つのトーンではない。非常に弱々しくなった人間の心理と感情をどう表現するか。かすれた声がその一つの引き出しになるかもしれないというアイデアが頭を巡る。それはまだ自分に残された知恵のひとつだ〉

 

悲鳴をあげる体に鞭を打ったのは、演じる役柄・宇多津貞夫に、自分の境遇を重ね合わせるからだ。それゆえ、時にはプロデューサーにこんな提案もした。

〈「宇多津という男は、仕事第一でもラグビー第一でもない。好きなラグビーができるのは、家庭があってこそ、支える妻への感謝があってこそなんじゃないか」

(中略)いまの自分にとって「家庭あってこそ」という前提は切実なことだった。妻と一緒に暮らしたことによって、自分の仕事への取り組み方は根底から変わった。「何が何でも仕事優先」ではない。仕事との距離がうまくとれるようになった〉

宇多津が3年前の試合で大けがを負わせた男・梅塚(竹中直人)に弱みを見せる場面では、自らの心の叫びがせりふとなって現れた。

「梅さんは強えなぁ。泣きたくなることありませんか。私、あるんです。夜中に一人になると大声を出したくなる。まだ生きたい、もっと生きたい、泣き叫びたくなる」