「もっと演じたい」ショーケンが貫いた、生き抜くという矜持

昭和と平成を駆け抜けたスターの最後
週刊現代 プロフィール

まだ知恵が残っている

再発後、萩原さんはこれまで以上のペースで、俳優としての仕事に心血を注ぐ。

〈がんを公表する気はまったくなかった。そもそも自分の病を世間に知らせる意味がどこにあるのか。大切なのは、前を向いて「いまを生きる」ことだ〉

なかでも萩原さんの心を惹きつけたのは、2018年にオファーがきたドラマ『不惑のスクラム』への出演だった。中高年のラグビーチームを結成する物語で、役柄はラグビーに打ち込む、余命わずかな初老のがん患者だった。

しかしこの頃、病状が悪化し、主治医からは今すぐに入院して延命治療に専念してほしいと言われていた。

 

〈腫瘍が目に見えない小さなものから大きなものまで、腹中で無数に散らばり、炎症を起こしたりしている。そのため臨月の妊婦のようにお腹が出っ張ってしまう。お腹が張ると、逆流性食道炎のように食べても戻ってくるので、それまでのようには食べられなくなっていた。

大きな腫瘍は大小の血管を巻き込んでいる。何かの衝撃、あるいは衝撃がなくても、もしお腹のなかで大きな腫瘍が破裂したら、出血多量で命を落とす危険性がある〉

医師にドラマ出演を相談すると、長い沈黙のあとに「それは自殺行為ですよ」と告げられた。

〈再手術をするのなら、この機会しかないだろう。それでもドラマをやるのか。撮影の途中で倒れるかもしれない。すると多くの人に迷惑がかかる。どうするか。

「どうしたいの?」と妻は聞いた。

「やりたい」と私は答えた。

「わかった」と妻は言った〉

萩原さんは出演を決意する。

2016年放映のドラマ「鴨川食堂」(NHK)の台本を読む萩原さん(2015年9月撮影)

〈歳を取れば、誰しも体力の限界にぶつかる。私の場合、そこに重い病気というハンディが加わっている。

けれども、まだ知恵の限界にはぶつかってはいないんじゃないか。つまり才能のすべてを使い切ってはいない。難関をクリアする知恵が、いまの自分にはまだ残されているはずだ〉