「もっと演じたい」ショーケンが貫いた、生き抜くという矜持

昭和と平成を駆け抜けたスターの最後

病を知り、限られた時間を悟った彼が、「最後に書き遺しておきたい」、そう思ったことがあった――芸能界のこと、友人のこと、そして愛する人のこと。死を目前にしたスターは何を伝えたかったのか。

 

自分から別れを告げた

〈もし君が倒れても、病気のおれはすぐに駆けつけることはもうできないんだよ。逆におれに何かあったときに、君が駆けつけて来てくれても、おれは迎えに行くことも、宿を用意することもできないだろう。だからまだお互いの加減がいいうちに、さよならしておこう。生きているうちに、このへんでひと区切りをつけようよ〉

古くからの友人に、こんなふうに別れを告げられるものだろうか。

がんで死を覚悟した萩原健一さんが、30年来の親友にかけた言葉は潔いものだった。遠方に住む友人も重いがんを患っていて、その不安からか、何度も電話をかけてくる。萩原さんは意を決して、別れを切り出した。事情を知らない人から見れば、不義理な人間と映るかもしれないが、いかにもショーケンらしい別れ際だ。

〈歳を取れば身軽ではいられない。しがらみが増えて重くなり、何をするにしても大げさになる。いちばん関係が良いときに、私のほうからお別れしておいたほうがいい。そう思った。

結局、その友人との連絡はそれきりとなった。

そんなふうに私は過去のものを一つひとつ整理していき、重い荷を下ろすように身軽になっていった。もちろん過去の思い出にとらわれ、感傷に沈むこともある。でもすべてをずるずると引っ張っていては前に進めない〉

平成最後の春に世を去った萩原さん(享年68)は、「残された時間のなかで、自分の真実の声を書籍の形で残したい」という希望から、自らの思いを『ショーケン 最終章』(講談社刊)にまとめていた(〈〉内は同書の引用)。

同書には、納得のいく生き方を追求した男の胸中が、余すところなく綴られている。

萩原さんが、人生の転機を迎えたのは2011年。消化管の壁に肉腫ができる「ジスト」という希少がんだと宣告された。手術で腫瘍を取り除き、仕事にも復帰。がんであることは周囲に隠し続けた。

がんと診断される直前、萩原さんは冨田リカさんという女性と結婚している。当初は、芸能界に馴染みの薄い女性との生活に戸惑いもあった。だが、スター・萩原健一ではなく、飾らない本来の自分・萩原敬三として生きるのに安らぎを覚えた。