がんは治る病へ──。「5年後生存率は67.9%」データが示す現実

最新「生存率」の分析から判明したこと
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2018年ノーベル医学生理学賞を受賞した本庶佑・京都大学特別教授による研究をもとに開発された「オプジーボ」の効果が注目されているが、この新薬も残念ながら万能でない。

この新薬は免疫細胞の表面にある「PD1」というタンパク質ががん細胞表面と結合することを妨げることにより、免疫力を高めてがん細胞を攻撃する仕組みだ。

最初は皮膚がんの一種の悪性黒色腫が対象だったが、その後肺や腎臓、胃などのがんに適用が拡大されて末期がん患者にも使われている。しかし、現時点では膵臓がんなどの難治がんに対する効果を明確に示すデータは示されていない。

がんになりやすい高齢者ほど検診に行かない

「全国がん登録」など多くのデータが、がん患者が増えていることを示しているが、「がんが増えている。困った事態だ」と考えるのは早計である。患者が増えている大きな要因は社会の高齢化によるものだからだ。

がん細胞は若い人も含めて誰の体の中でも毎日多数発生しているが、免疫細胞がこれを退治して大きながん組織になることを防いでいる。しかし加齢とともに免疫力は低下し、がんは発症しやすくなる。

しかも、がんは遺伝子のわずかな異常が長い間に蓄積して細胞が無秩序に増殖してしまう病気なので、長く生きていればそれだけがん発症のリスクは高まることになる。

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実際に、国立がん研究センターの別の調査により、がん患者の高齢化が年々進んでいることが明らかになっている。高齢者は定期的な健康診断の機会が減る傾向になる上に、体調が悪くなっても医療機関に行かないケースも多く見られる。高齢者のがんの早期発見が今後いっそう重要になってくるだろう。

がんになるリスクが増える高齢者ほどがん検診の重要性が増しており、「安価で手軽」な高齢者向けのがん早期発見方策は喫緊の課題と言える。

「生存率」は10年前の医療に基づくものだ

全国がんセンター協議会は「全がん協加盟施設の生存率データの更新にあたって」と題したサイトで次のように指摘している。

「医療の進歩はさまざまな病気を克服してきましたが、未だにがんは人の運命を左右する病気とも言われています。確かに、現代では国民の2人に1人ががんにかかる時代、男性では3人に1人、女性では4人に1人ががんでなくなっています。しかし、その一方でがん患者さんの治療成績も着実に向上しています。がんは不治の病から、つきあう病へ、そして治る病へとなりつつあります」

「(今回公表された)生存率は、日本のデータとしては最も新しいものですが、それでも10年以上前にがんにかかった方のデータです。(略)現在は医療の進歩により、この生存率の数字よりさらに治療成績は向上していると考えてください」

中壮年期を過ぎると自分や自分の家族、あるいは知人ががんと診断されることが増える。いくら多くのがんが「早期発見なら治る」と言われても、まだまだ「がんは怖い」というイメージは強い。がんを宣告されて平常心でいられる人は少ないだろう。

「その時」に備え、がんときちんと向き合って闘病するためにも、日ごろからがんをめぐるさまざまな状況を自分なりに調べておくことも大切だ。その際、生存率はあくまで一つの指標であることを忘れてはならない。