“高齢者とクルマ”問題、現実的な解決は「ゆっくり自動運転」にあり

自動運転実用化への「第一歩」を報告
サイエンスポータル プロフィール

今、森川さんはプロジェクトの一環として、運転できる住民が運転できない住民の移動を助ける「ボランティア輸送」を道路交通法上の無償運転の範囲内で行っている。

これをゆっくり自動運転に置き換えるのであれば、法の性格上、現状では利用者からガソリン代くらいしか請求できない。やがて法律が緩和されても、ゆっくり自動運転が受け持つ短い距離では、1回の乗車でせいぜい100円くらいがいいところ。とても採算はとれない。

したがって、単独事業として運営するなら公的補助が必要だ。あるいは、バス会社やタクシー会社などと共同で、付加価値の高い新サービスとして組み入れるのも手だろう。スーパーマーケットなどの商業施設や病院がサービスを提供する、というモデルもあるかもしれない。

「ゆっくりカート」に乗り、目的地に到着した実験参加者(出典:春日井市ホームページ

どのような形態のサービスを取り入れるかは、その地域の特色を踏まえて入念に計画する必要がある。愛知県春日井市では、高齢化が進んだ住宅団地内の1km四方ほどの地区で、おもに高齢者を利用者と想定して実験を行っている。

「ゆっくり自動運転」でのラストマイル輸送を実現すべく、プロジェクトは着々と進展中だ。

幸せを呼ぶ「ゆっくり自動運転」

研究グループは「ゆっくり自動運転」を含めた高齢者への移動サービスの実証実験で、「外出頻度が増える」「幸せ感が増す」など、生活の豊かさへの確実な効果を実感している。

日々の生活で「あとちょっと」の移動がゆっくり自動運転に置き換わったら……。マイカーが必要なくなり、駅前の駐車場はもっと人の暮らしを豊かにする場所として利用できるかもしれない。ラストマイルの相乗りで住民たちの交流が生まれるかもしれない。

経済的な無駄も省け、環境に対する負荷が減る。私たちのライフスタイルもアップグレードできるだろう。

〈「サイエンスポータル」過去の関連記事〉
・2018年11月2日ニュース「日本版GPS体制の本格運用始まる 高精度位置情報の活用に期待
・2017年10月4日研究開発戦略ローンチアウト第81回「情報科学技術がもたらす人間の意思決定の変化