“高齢者とクルマ”問題、現実的な解決は「ゆっくり自動運転」にあり

自動運転実用化への「第一歩」を報告
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時速20km以上で走る車は、道路運送車両法で衝突安全性に関する厳しい基準が設定されている。逆にいえば、時速20km未満でしか走れない車は規制が緩い。

自動運転にとっては厳しい現在の法規制の下でも、地域限定で低速なら応用しやすい点に注目したわけだ。

自動運転車、ただいま「教習中」!

研究グループは、これまでに2種類の自動運転車を開発した。

1号機「ゆっくりコムス」は、トヨタ車体の超小型電気自動車・コムスがベースの1人乗り。2号機「ゆっくりカート」は、ヤマハ発動機の電動ゴルフカートがベースの4人乗りで、公道を走れるように装備を整えた。

1号機「ゆっくりコムス」(左)と2号機「ゆっくりカート」(出典:名古屋大学未来社会創造機構

すでに2号機は、公道での走行安全性を検証するレベルにまできている。

駐車車両や歩行者を避けるのはお手のものだ。ただし、信号を確実に見る、右折時に対向車を確認するといったところは磨きをかける必要があり、政府の自動運転レベルでいうと2.5程度だという。自動車の教習所で路上に出はじめたころの生徒と同じレベルといった感じだろうか。

車いすから安全な距離を保ちながら走行する「ゆっくりカート」(出典:春日井市ホームページ

社会での利用を進めるためには、「人がサービスをうまく利用できるのか」というのも重要なポイントだ。住民が専用のスマホアプリから行きたい場所と時間を送信すると、そのリクエストをもとに経路を自動作成し、家に迎えに来た「ゆっくり自動運転車」が、その住民を目的地まで乗せて行く。実証実験では、この一連の流れが機能することを確認した。

いま、7年間のプロジェクトのうち4年が経過し、森川さんいわく「達成度は60%」と順調だ。

GPSを使わない、新しい「地図の作り方」

自動運転は、カーナビで経路をたどればよいという単純なものではない。

自動車の自動運転には、たんなる道順だけではなく、どの車線を走りどこで停止するかというような、もっと詳しい運転手目線の情報まで必要だ。場所によっては誤差が10mくらいにもなるうえに、建物やトンネルで信号が途絶えてしまうGPSでは、まだまだ足りない。もっと精度のよい地図が必要だ。

自動運転で使うために森川さんたちが開発している地図は、人がよく慣れた道を運転するときに使う「頭の中の地図」と似ている。