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“高齢者とクルマ”問題、現実的な解決は「ゆっくり自動運転」にあり

自動運転実用化への「第一歩」を報告
高齢者のかかわる交通事故が全国で報じられている。その対策として、「自動運転」の一刻も早い実現が叫ばれるようになった。そんな中、名古屋大学の森川高行教授は、少し独特な自動運転を研究している。

それは、時速20km以下で走る自動運転車。この「ゆっくり自動運転車」は、地域に根差した高齢者の足となりうるのだろうか。

これが未来の「移動」の理想

いま世界で、人や物の「移動」が大きく変わりつつある。最近よく耳にするようになったMaaS(Mobility as a Service=マース)。直訳すれば「サービスとしての移動」だが、ようするに、出発地から目的地までの移動を切れ目なく提供する未来のサービスのことだ。

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スマートフォンのアプリに「遠くの親戚の家にできるだけ早く行きたい」と問いかければ、最適なルートがすぐに返ってくる。自宅近くからバスで駅に向かい、列車が目的地の最寄り駅に到着すれば、迎えに来ていた自動運転の車が、そこから親戚の家への最後の道のりを運んでくれる。バス、列車などと個別に料金を払わなくても、すべての料金をアプリで支払い済み──。

名古屋大学COI(センター・オブ・イノベーション)の活動の中で森川高行教授が率いる研究グループは、「ラストマイル」とよばれる自動運転の部分の研究を進めている。

最寄り駅から目的地までの細い道を、自動運転車が時速20km以下の低速で走る「ゆっくり自動運転」だ。

人に優しい「ゆっくり」自動運転

人が親しみを持てる自動運転。それが森川さんたちの理想とする自動車の自動運転のあり方だ。

スピードを出す必要がない住宅街などで違和感のない自動運転。乗りながら近所の人にあいさつできるような、身近な社会に溶けこむ存在であってほしい……。「ゆっくり」は、そんな自動運転によく似合う。地方の高齢者のような交通弱者のラストマイルに優しく手を貸し、心と体の元気をサポートしようとしている。

このゆっくり自動運転は、技術的にも有望だ。いまの平均的な自動運転技術で機械が見ることができるのは、せいぜい100m先までだ。時速60kmで走れば、わずか6秒の距離。障害物を見つけてからこのような短時間で状況を判断し、コントロールするには、かなり高度な技術が必要だ。

そこで森川さんは、幹線道路を走る一般車並みの速さでの自動運転を目指す世の流れに乗るのではなく、「地域限定で低速」という条件のもとで自動運転の早期実現を目指すことにした。

それを追うかのように政府は「官民ITS構想・ロードマップ2018」を発表し、自動運転の「レベル4」(高度運転自動化)を新たに定義した。「ゆっくり自動運転」にかなり近い考え方だと森川さんはいう。

自動運転レベルの定義(出典:官民ITS構想・ロードマップ2018)

ゆっくり自動運転には、法的に有利な面もある。