世界中に発信したい、日本ならではの「銭湯」「温泉」の魅力
外国の人とも「裸のつきあい」をこれが日本の「おもてなし」
伊豆半島にある「望水」という旅館を訪れたとき、象徴的な日本のおもてなしを経験しました。

フロントと売店が両脇にある、間口の広いロビー。その手前で靴を脱ぎ、スリッパに履き替えるあいだ、スタッフの気配はなくとても静かです。ゆっくりと、自分のペースで旅館と出会う瞬間を大切にしているのです。
美しい床の石や、深いばら色の木の柱。
永遠につづくような太平洋の水平線が、ロビー奥の窓の向こうで揺れています。
一段下がった喫茶スペースで腰を下ろし、うっとりしていると、いつの間にか手元に味やわらかな昆布茶が置いてありました。
いつ、どこから、だれがもってきたかすら気がつきませんでした。
これこそが、日本的なおもてなし……。
相手の心を読んだうえでのサービスの極致です。
このおもてなしには、特殊な能力、つまりもてなす側が、そのおもてなしを受ける側の喜びを感じ取り、満足を感じられる……という感性が必要です。
アンケートなどの情報収集で得る直接評価ではなく、「お客さまの幸せな笑顔」や「お客さまの笑い声」などの精神的な評価を汲み取らないと、なかなか到達できない精神的な能力です。
ある企業が地域に貢献するために、川の掃除に協力していることを先日雑誌で読みました。町の住民が子どものときに楽しんで遊んでいた川が年々汚れてきたため、みんなで川を復活させることを決めたという記事です。
そして、サポートしている社長の話を読んで感動を覚えました。
川をきれいにすることは、町を訪れる方々への「おもてなしになる」というコメントでした。
最近はサービス業のグローバル化が進み、比較的簡単な親近感の表現や、積極的なホスピタリティーを重んじる方向に、日本も変わってきているような気がします。
しかし、形式的に海外のマニュアルを取り入れるのもいいのですが、それよりむしろ日本的な「おもてなしの心」を大切にすることが、日本人にとって大事なのではないでしょうか。