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どうなる「イギリスのEU離脱問題」大混沌の先に見えてくるもの

解散総選挙か、2度目の国民投票か
イギリスのメイ首相は、本日24日に辞任を表明すると報道されている。2016年6月の国民投票から約3年、「イギリスのEU離脱問題」は一体どうなるのか。元毎日新聞欧州総局長でジャーナリストの笠原敏彦氏が2つのシナリオを解説する。

イギリスの欧州連合(EU)離脱問題の行方は「メイ首相退任後」に焦点が移ってしまった。

メイ首相は21日、従来の姿勢を一転させ2度目の国民投票実施を選択肢とする新提案を行ったが、その日和見主義的な内容に与野党双方から総スカンを食らい、辞任要求が一気に高まっている。

議会のムードを一言で表現するなら、「いいかげんにしろ!」というものだろう。

八方塞がりの中で精神的にも追い込まれたメイ首相の自滅という感が強い。

メイ首相は6月初めに辞任期日を表明することをすでに約束しているが、辞任表明はカウントダウンに入ったとの見方が強い。

本稿を書くにあたり、ブレグジット(EU離脱)問題の行方、イギリス政治の今後を展望しようと思案してみるが、「視界はゼロ」になってしまったというのが正直なところである。

それでも、今後の展望のヒントになりそうなパズルの断片を寄せ集めていくと、混沌の先にぼんやりと垣間見えるシナリオもある。

それは、10月31日の新たな離脱期限までに事態を打開することはできず、保守党が解散総選挙を仕掛ける、または「合意なき離脱」か「離脱撤回」かを問う2度目の国民投票へと最終的に追い込まれていくというものだ。

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聞く耳を持たないメイ首相

まずは、ブレグジットをめぐる最近の動きを簡単に押さえておこう。

イギリスは3月29日にEUを離脱する予定だったが、メイ首相の離脱協定案が英議会で3度否決されたことを受け、新たな離脱期限は10月31日に延期されている。

与党・保守党にとって深刻なのは、3度の採決で閣僚を含む大量造反が繰り返されたことだ。

二大政党制を機能させるための党議拘束はおろか、議員内閣制の要である内閣の連帯責任さえ全く働かない状態が続いてきた。

保守党議員(313人)のうち強硬離脱派は100人ほど。

離脱協定案が英領・北アイルランドとアイルランド共和国の間に物理的な国境管理を復活させない保証策(バックストップ)として、妙案が見つかるまでイギリスがEUの関税同盟に留まるとしていることに対し、「EUの属国に成り下がる」などと強く反発している議員らである。

しかし、これは理由の一つに過ぎない。根源的なところでは、2017年6月の解散総選挙実施(保守党議席減)など判断ミスを繰り返し、周囲の見解に「聞く耳を持たない」メイ首相のリーダーシップへの反感が強いのである。

 

21日に発表された新提案はその極みだろう。

メイ首相の議会への新提案は、①自らの協定離脱案が承認されれば2度目の国民投票実施の是非を議会で投票に諮る②北アイルランド国境問題では保証策を実施しなくても済むように2020年12月(EUとの合意に基づき離脱した場合の移行期間終了期日)までにその代替案を考案するよう政府に義務づける、ことなどから成る。

②は最新技術を駆使することで国境管理を復活させなくても物流を管理できるようにするというアイデアだが、残された1年半ほどで実現できる可能性はほとんどないというものだ。その場しのぎである。

①はEU離脱を無効としかねないため保守党議員の多くが反対している上、労働党への大きな譲歩である。

メイ首相が閣議での強い反対を押しのけて新提案に踏み切ったことを受け、閣僚(下院院内総務)を辞任したアンドレア・レッドサム氏はこう不満は述べている。

「最近のブレグジットをめぐる法的提案は閣僚によって適切に吟味も承認もされておらず、政府の手続きは崩壊している」

これ以前にも、メイ首相は保守党党首として致命的な間違いを犯している。

自らの離脱協定案への支持を集めるため、党内強硬派の懐柔路線から野党・労働党との協調路線へ大きく舵を切ったことである。4月2日のことだった。

メイ首相の心理を推測するなら、党の結束という「党益」よりも、合意なき離脱を回避するという「国益」を優先させるという一大決断だったのだろう。