ISの拠点と化すマレーシア「捕まったテロリストの意外な顔ぶれ」

ミャンマーを追われたあの難民が
大塚 智彦 プロフィール

ミャンマー大使館がテロの標的に

逮捕した4人のこれまでの捜査から、計画していた爆弾テロでは、施設などの標的以外にマレーシアの重要人物4人をターゲットにしていたこともわかったという。

しかしアブドゥル・ハミド長官は「あまりにセンシティブな問題なので控える」としてそのターゲットとされたVIP4人の氏名の公表は拒否した。

さらに「マレーシアでテロ関連容疑によるロヒンギャ族逮捕は初めてのケース」(警察長官)というロヒンギャ族の2人がクアラルンプール市内にあるミャンマー大使館への爆弾テロも計画していたことが判明したとしている。ミャンマー国内での軍によるロヒンギャ族への人権侵害、弾圧への報復が動機とみられている。

逮捕されたロヒンギャ族の1人(20歳)は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が発行した難民身分証カードを所持しており、マレーシアには難民として滞在していたという。残る1人は25歳で、労働者として働きながら地元のIS関連組織と関係があったことを供述しているという。

インドネシア人の逮捕者も、外国人労働者としてマレーシア国内で就労していたことがわかっている。

こうした逮捕者4人の国籍や背景から、警察当局は現在その活動を休止あるいは停止したとみていたマレーシア国内のイスラム過激組織がその活動を再開した可能性もあるとみて警戒を強めている。

その上でそうした動きの背景に中東のISで活動しているマレーシア人メンバーとの関係についても情報収集を進めている。

このISのマレーシア人メンバーとされる人物は、2018年1月からインターネットのSNSなどを通じて今回逮捕された4人などと連絡をとり、テロの具体的な指示を出していた疑いが持たれている。

今回の逮捕で押収された武器(自動拳銃、実弾、爆発物など)は中東のシリアから何らかのルートでマレーシア国内に持ち込まれたものとの見方が強く、ISとの関連性が極めて強いことも指摘されている。

こうした経緯から、マレーシアがISの東南アジアでの活動拠点と位置付けられている可能性もあると治安当局ではみている。

 

ISに忠誠を誓うテロ組織

中東での劣勢が伝えられるISは、ISに参加しているマレーシア人メンバーや、すでにマレーシアやインドネシア、フィリピンなどに戻った元IS戦士らを通じて東南アジアでの拠点構築を進めているといわれ、これまではフィリピン南部ミンダナオ島周辺が有力拠点候補とされてきた。

2017年5月には、ミンダナオ島南ラナオ州のマラウィが、現地で活動する武装勢力「マラテグループ」と、ISと関係があるとされたイスラム教過激派組織「アブ・サヤフ」によって武力占拠される事件が起きた。この集団にはISの元戦士やISに共感する外国人メンバーも参加していたとされ、イスラム国建国を目指した激しい戦いとなった。

しかしフィリピンのドゥテルテ大統領による戒厳令の布告下、米軍などの支援を受けたフィリピン軍の粘り強い奪還作戦で、マラウィは2017年10月に解放、奪還された。

武装組織の残党メンバーは海路でマレーシアやインドネシアに逃れるか、マニラなどフィリピンの都市部に潜伏して再興を期しているといわれている。

フィリピンと並んでイスラム教過激派やテロ組織の活動が活発なインドネシアでは、2018年5月13日、第2の都市スラバヤで3ヵ所のキリスト教会を狙った同時自爆テロが発生、翌14日にはスラバヤ市警察本部でも爆弾テロ事件が発生した。

いずれの事件もISに忠誠を誓うインドネシアのテロ組織「ジェマ・アンシャルット・ダウラ(JAD)」の犯行だった。

JADはその後も各地でテロを計画、2019年5月4日から8日にかけて首都ジャカルタ周辺でインドネシア国家警察の対テロ特殊部隊(デンスス88)による摘発でJADのメンバー4人が逮捕された。

押収した資料や情報などからJADは4月17日に投票が行われて現在開票集計作業が続く大統領選挙の公式結果が発表される予定の5月22日前後にジャカルタでテロを計画していたことが判明、治安当局による22日に向けた厳戒態勢が続いている。

このほかタイ南部でもイスラム教過激組織が爆弾テロや銃撃戦でタイ治安当局との対立を深めているが、これまでISとの具体的なつながりは浮かび上がっていない。