地球惑星科学の第一人者が考える「伝統的科学」vs.「最先端科学」

ビッグデータ時代の到来と科学の未来
サイエンスリポート プロフィール

しかしながら太陽が持つ短期・長期の周期的な変動と、われわれの生活圏への影響については「相関があることは確認されているものの、詳しいメカニズムは明らかにされていない」。

藤井「最近、年輪の解析などから、数千年の太陽の長期周期変動と地球の気候の関係の研究が進んできています。このような研究から太陽のダイナモ(磁場生成)が理解できると、『これから地球は氷河期になるのか? あるいは温暖化するのか?』といった将来の予測も可能になるかもしれません」

右にあるのは、藤井機構長がオーロラの記録をつけるのに使っていたフィルム式の全方位カメラ。
現在では、機械学習を用いる手法が広がりつつある

藤井機構長によれば、ここで科学が取りうる方法は大きく2つある。

藤井「1つは太陽ダイナモやフレア等の太陽の運動、太陽・地球系におけるエネルギー変換・伝播、プラズマの運動などの物理過程を、理論や実際のデータから明らかにして、メカニズムを理解しようという、科学本来のやり方です。

もう1つは、AIの急速な発達などを背景に、主に機械学習を用いて大量に入手可能になったデータを機械に学習させ、現実の予測の精度を高めていくというやり方です」

「私にはどうしても基本的な原理を知りたいという習癖がある」と藤井機構長は笑うが、機械学習は急速に多くの成果を挙げており「これだけ社会に影響を与える分野なので、科学としてベスト・プラクティスで予想しなさいという要請に応えることも重要」と指摘する。

藤井「2つの方法が連携することが大事であり、それによってデータサイエンスの進展が大いに期待されます」

データサイエンスとは、複雑な現象を大量のデータから解明しようとする、近年の科学の大きな潮流だ。

「開かれた」データと科学が求められる

複雑な自然を相手にする地球惑星科学には、データの獲得と、データサイエンスの発展が欠かせない。たとえば、もし電離圏の中の大気の密度、温度、動きなどを立体的かつ高解像度に測定したデータが得られれば、ジオスペースやオーロラについての研究は大いに進展する。