地球惑星科学の第一人者が考える「伝統的科学」vs.「最先端科学」

ビッグデータ時代の到来と科学の未来
サイエンスリポート プロフィール

実際、2016年に打ち上げられたジオスペース探査衛星『あらせ』は、『ヴァン・アレン帯』という現場へ行って、プラズマ波動と高エネルギー粒子が相互作用する様子を世界で初めて見ようとしています」

惑星から見る太陽系の「多様」と「普遍」

この2つの観点をつなぐのが、「多様性」と「普遍性」という地球惑星科学のキーワードだ。

太陽系の惑星はそれぞれ大きさが違う。また、たとえば金星にはほとんど磁場がなく、水星には大気がない。ちなみに、大規模なオーロラが見られるのは、磁場と大気の両方があって太陽風が吹く木星、土星、地球だけだ。

藤井8つの惑星の中にこんなに大事な要素の組み合わせが4通り揃っていて、しかもどれも人工衛星が行くことができる。地球の周りの天体は、たいへん多様性に富んだラインナップなんですね。

一方で、それらを貫く共通の物理過程や、1つのシナリオのようなものがおそらくあって、逆に多様性の中から普遍性を抽出できる可能性がある。太陽地球系で何らかの現象の過程が解明できたら、それを宇宙の他の銀河系や、もしかすると地上での核融合などの現象にも当てはまる可能性がある。この意味でもすごく重要な科学だと思います」

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地球惑星科学では一般に、主に電磁気学と運動・流体力学の方程式を用いて、速度、質量、電場、磁場といった物理量の空間分布と時間変化を導き、さまざまな現象の解明を目指す。

しかし自然の複雑さというものは、このような第一原理や理論だけでは解くことができない。そのため、これに観測に基づくシミュレーション、モデリングを加えた三位一体で、複雑な科学への挑戦が進められている。

藤井「『毎晩オーロラが出る』なんて言い方をすると、いかにも毎日繰り返すようだけれども、自然というものにおいてまったく同じ現象は2度と起こらない。『単純化せずによく知る』ということと矛盾するようだけども、その中からいかに共通する部分を抜き出すかを考えなければいけません」

「伝統」と「革新」。科学はどう舵を取るのか

そもそも、地球惑星科学が対象とする“宇宙”の環境を支配し、そのほぼすべてのエネルギー源であるのは、もちろん太陽である。その表面の磁場の空間分布と時間変動は詳細に解明されており、エネルギー量も計算されていて、「恒星の中で最も厳密に物理量がわかっている天体」であるという。