今こんな政治家がいたら…「総理の椅子を蹴飛ばした男」をご存知か

戦争を経験した男の凄み
週刊現代 プロフィール

荒井 伊東さんは派閥よりも党中心の政治に変えようとしていました。当時の政治は莫大なおカネがかかった。派閥で部下を養うとなるとその何倍もかかる。派閥のそうした金権体質を改めるべきだと強く主張していました。

平出 先生はイメージ通りに本当に清廉でしたよ。伊東先生の選挙は本当におカネを使わない。一軒一軒回るドブ板選挙です。それと毎日、有権者などいろんな人たちに30~50枚もの葉書も書いていました。これは大臣になっても続けていました。

とても真似できることではありません。読書家で、政治、外交、文学など大量の蔵書もありました。ただ、実はその中で一番読んだのは「昭和歌謡」の本(笑)。新国立劇場に芝居を観に行ったり、大の相撲好きでもありましたね。

国正 私も何度も会津に行きましたが、自宅には風呂がない。それで近所に借り風呂をしていましたね。東京の家もトタン屋根でオンボロ。それで平気なんだ。

当時は番記者を接待したり、スーツの仕立券を渡すような派閥もあった時代でしたが、伊東さんとの会食はいつも割り勘でしたね。

平出 官房長官になった時、マスコミが飛ばしたヘリからの空撮で、錆びた屋根の私邸が映ったんです。すると、九州に住む中学生の女の子から500円の入った封筒が事務所に届きました。手紙には「これで屋根を直してください」と(笑)。

好きな食べ物も蕎麦と餅という質素なものでした。政治家は贅沢な暮らしをしちゃいけないという思いがあったのでしょう。政治資金パーティーはついに一度もやらなかった。

 

国正 政策面では伊東さんは対中関係にも大きく貢献しました。江沢民や朱鎔基などの要人と信頼関係を築き、鄧小平とは最高実力者になる前から計7回も会談し、「私たちは本当に心を打ち明けられる友人だ。まさしく朋友の間柄です」とまで言わせた。

今の日中関係は伊東さんの理想からは大きく外れてしまっている。安倍外交は伊東さんの時とは信頼関係が全然違うでしょう。

荒井 私はいま国会にいて、伊東さんのような政治家が一番必要とされていると強く感じます。あの当時の良質な政治家や役人は、国家国民のためという意識があった。

その根っこが今は崩れ始めている。たいへん危機的な状況です。かつての自民党政治は伊東さんのような人がいたからうまくやれたのだと思います。

平出 伊東先生のような政治家は100年経っても出てこないのでは。だからこそ亡くなって25年も経つのに、先生は際立つ存在であり続けているんだと思います。

「週刊現代」2019年5月25日号より

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