今こんな政治家がいたら…「総理の椅子を蹴飛ばした男」をご存知か

戦争を経験した男の凄み
週刊現代 プロフィール

自宅には風呂もなかった

国正 伊東さんは当時、人差し指にずっと包帯をしていました。糖尿から来る出血で包帯が取れない状態でした。確かに固辞した原因の半分は健康問題だと思います。

しかし、もう半分の理由は党内状況です。伊東さんは「自民党には現状に対する危機意識が足りない。この際リクルート事件関係者は全て役職を降りて総退陣し、若手を積極的に登用するべき。さらに派閥も解消する」という厳しすぎる条件を突きつけた。

それどころか竹下を始め、安倍や中曽根など事件に関与した幹部には議員辞職まで求めた。ところがそうした中、すでに竹下の元で、伊東を擁立して閣僚人事はどうするか、と話し合われていた。このことを知り、伊東さんは激怒したんです。

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平出 そうして、5月9日、国会内での記者会見で有名な「本の表紙だけ変えても中身が変わらなければダメだ」という言葉が出たわけですね。

ただ、実はあの言葉は伊東先生が会見でボソッと言っただけなんです。頭の中にはあったのでしょうが、決め台詞として言ったわけではない。つい本音が出たのでしょう。それが大々的に報じられた。

 

荒井 結局、伊東さんは首を縦に振らず、6月3日に宇野宗佑内閣がスタートしたわけですね。竹下さんたちに議員辞職を迫ったというのは、自分が固辞することによって、従来の派閥の論理で動いていた自民党政治を変えようということを狙ったのではないか。

あれだけの政治家だから総理辞退ということがどれだけの影響を与えるかはわかっていたはずです。

平出 私はあの時、もしかしたら総理を引き受けようとした日もあったのではないかと感じています。たとえ命は半年しかなくても、という風に考えているように見受けられました。

でも、本当に党の全員が反省し、自分を支えてくれるのかという疑問は拭えなかった。そして、結局は口先だけの反省だったと見抜いたのだと思います。

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