オルタナ右翼を拡大させた「インターネット・ミーム」の不穏な存在感

私たちの「現実認識」に介入する
木澤 佐登志 プロフィール

「オペレーション O-KKK」は何の変哲もないOKハンドサインを白人至上主義を示すサイン=ミームにしようという作戦である。中指と薬指と小指の三本は「W」、親指と人差し指で作る輪っかとそこから直角に伸びる手首は「P」、すなわ「White Power」の頭文字というわけだ。

首謀者はツイッターやその他のSNSで「OKハンドサインは白人至上主義のシンボル」であることをあらゆる手段を使って広めてほしいと4chanの住人たちに訴えかけた。

結果的に、この偽のヘイトシンボルは本当にヘイトシンボルになった。オルタナ右翼はミームを触媒として人々の現実認識を変容させたのだ。

2018年の9月には、TVカメラの前でOKハンドサインをしてみせたアメリカ沿岸警備隊の隊員が処罰を受けるという出来事があった。隊員がOKハンドサインをするシーンのキャプチャ動画がツイッターで拡散され炎上したのだ(彼のハンドサインが果たして確信犯的な振る舞いだったのか否かは今以て不明である)。

かくしてオルタナ右翼によるミーム作戦は今回も成功を収めた。彼らはひとつの記号の意味を書き換えてしまったのだ。

 

私たちの現実認識に介入してくる

記号の改変はオルタナ右翼の常套手段といえる。ヒラリーがトランプ陣営を貶すために放った「Deplorable」という言葉はオルタナ右翼による価値転換によってポジティブな意味を付与され、彼らが連帯するための符牒となった。

そして、無害なOKハンドサインは(ほとんどの人々にとって)ネガティブな意味に書き換えられ、人前でうかつに親指と人差し指で輪っかを作ることさえ躊躇われるようになり、SNSはパラノイアで溢れた。

オルタナ右翼のミーム戦略は、思想ではなく人々の現実認識それ自体に介入してくる側面を持っている。たとえば、ある日突然ありふれた記号やハンドサインがまったく異なる意味に書き換えられていたら、私達は一体どうすればいいのだろうか?

そして今年の3月16日、事件後、法廷に初めて姿を現したブレントン・タラントは、カメラの前で薄笑いを浮かべながら、手錠をかけられた手で逆さまのOKハンドサインを作ってみせた。ミーム世界大戦はまだ終わっていない。それは始まったばかりなのだ。