オルタナ右翼を拡大させた「インターネット・ミーム」の不穏な存在感

私たちの「現実認識」に介入する
木澤 佐登志 プロフィール

たとえば、バズフィードによれば、英デイリー・メールはタラントの「The Great Replace-ment」の全文がダウンロードできるようウェブサイト上にアップロードしていた。同様に、英ザ・サンも犯人のライブストリーミング動画の一部を記事に埋め込んでいた。

こうした一部の主流メディアの振る舞いは、「自分のメッセージをミームとして広めてほしい」と呼びかけていたタラントの思惑に図らずも乗っかってしまっているといえる。

以下に述べるように、こうしたことは必ずしも今回の事件だけに当てはまる問題ではない。とりわけ大統領選挙頃を境に顕在化してきたミームの拡散という問題には、常にメディアも一定程度関わってきた。

PVを稼ぐために半ば面白半分にミームを取り上げるメディアも存在する。だがそこではミームの表層的な部分だけが掠め取られ、その背景にあるものに対する批判的な検討がなされることはない。そうした言及は、結果としてミームの拡散にいたずらに加担してしまうだけである。求めれらるべきは、ミームがどのような機序で拡散していくのか、といった原理的な考察であろう。

 

トランプ大統領を生んだ「カエルのペペ」

オンラインカルチャーに関する著書で知られるウィットニー・フィリップス(Whitney Phillips)は、大統領選挙でトランプが勝利した背景には、オルタナ右翼が文化的なヘゲモニーを握ったことが関係していると指摘する。その際に彼らが利用したのがミームとSNS、そして主流メディアだった。

たとえば、2016年の大統領選挙期間中にヒラリー・クリントンが演説の中で放った「みじめな人々の集まり(Basket of deplorables)」というフレーズがある。これは対立するドナルド・トランプの支持者たちを指して用いたフレーズだった。

だが、トランプ支持者はこの「みじめな人々(deplorables)」という言葉を「(トランプの”みじめな人”であることを誇ろう)Proud to be a Trump "Deplorable”」といったポジティブな意味に転化させた。

大統領選時、トランプの集会には「deplorable」の文字が印刷されたTシャツを手にした支持者も現れた〔PHOTO〕Gettyimages

メディアでも大きく取り上げられ、SNSでも広く拡散されたこの「Deplorable」という言葉は、結果的にそれまで周縁的な存在であり、お互いに繋がりのなかった、白人至上主義者、移民反対論者、一部の共和党員、陰謀論者、そしてオンライン上のアンチ・フェミニストやアンチ・ポリティカル・コレクトネスのトロール(troll・詳しくは後述)たちを連帯させ、オルタナ右翼(alt-right)という集合的概念を前景化させるためのひとつの符牒として機能したのである。

また、オルタナ右翼がメインストリームに浮上してくるきっかけには「カエルのペペ(Pepe the Frog)」と呼ばれる彼らのマスコットキャラクター兼ミームの存在もあった。カエルのペペとは、もとはマット・ヒュリーのカートゥーン『Boy's Club』に登場するカエルのキャラクター。2008年頃から4chan等で、怒りや悲しみといった感情を伴うリアクション用の画像として用いられていた。