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なぜGDPで金融が過大視されるようになったのか

英米流「手数料資本主義」の正体
経済ニュースに必ず登場するGDP。この数値に一喜一憂してしまいがちであるが、はたして、このGDPの計算方法は、実体経済を反映しているのだろうか。経済史を専門とする著者が、GDPの金融化、手数料資本主義をキーワードに、イギリス、アメリカが世界史上ヘゲモニーを獲得した理由を明らかにする。

GDPは実体経済を反映しているのか

日本の一人当たりのGDPは、2018年には世界で第26位にすぎない(名目、ドル換算)。2000年には、世界第2位であった。ここから日本の経済力が大きく低下したととらえる人も多いであろう。その一方で、日本のこの数値から、GDPが実体経済を反映しているかどうか、疑わしいと思う人もいるだろう。

さらに、じつはGDPの計算そのものに問題点があると考える人もいる。現在国連で働いているヤコブ・アッサ氏は、その著書で、金融面が過大に評価される現在のGDPの計算方法には大きな問題点があると主張する(Jacob Assa, The Financialization of GDP, Routledge, 2017: 拙訳により知泉書館から出版予定)。GDPとは、一定期間内に国内で産み出された付加価値の総額であるが、金融が生み出す「付加価値」が、過大視されているというのである(ただし、アッサ氏は、これは自分独自の見解であり、国連の見解ではないと付け加えることを忘れない)。

たとえば、GDPに債券や株式、そして不動産で得られた収入(キャピタルゲイン)は含まれない。これは、「付加価値」が加わったものではなく、商品の価格が上下することにより得られた収入に過ぎないからである。

ところが、現実には何も「付加価値」を生み出していない金融活動がGDPに含まれるようになっていると、アッサ氏は言う。

ここではまず、実際のGDPの計算方法について少し触れてみたい。

信頼できないGDPの数値

GDPが実体経済を反映したとはいえない指標であることは、失業者が増えても、GDPが上昇し、一見、景気が回復したようにみえることからも理解できよう。

そもそもGDPとは、失業率などの比較的簡単に計算できる数値とは異なり、さまざまな仮定を前提し、多くの推計から成り立つ人工的な指標である。そしてその計算は、国民経済計算System of National Accounts(SNA)をもとにしてきた。これは、いわばGDPの計算手法のことであり、1953年以降、何度か改定されてきた。その間に、以前なら「付加価値」とはみなされなかったものが、「付加価値」とみなされ、現在ではGDPとしてカウントされるようになっているのである。

たとえば、借り手と貸し手の仲介をおこなう金融仲介による収入は、1953年の段階では、手数料として、GDPには含まれてはいなかった。利払いは、元来は「移転」として扱われ、社会に直接富をもたらすものではないと考えられていたが、現在ではGDPの一部である。

このように、金融活動のなかでGDPに含まれるものが増加してきたが、そこに明確な理由があるわけではない。したがって、本来GDPには含まれるべきではない経済活動が、GDPのなかに入っている可能性は高く、われわれはGDPの数値を疑うべきなのである。GDPに内在する問題点の一つとして、金融の寄与度が高く計算されすぎることがあり、アッサ氏はこれを、「GDPの金融化」と言った。「付加価値」の合計がGDPであるという本来の定義を正確に使用すれば、世界の本当のGDPは大きく低下する可能性があるのだ。