「社内失業」という大問題を克服しなければ、日本経済の復活ナシ

「終身雇用」をどう考えるか
加谷 珪一 プロフィール

安倍政権は産業界からの強い要請を受けて、大量の外国人労働者受け入れに舵を切った。保守を自認する安倍政権が事実上の移民政策を推進するというのは奇妙な話だが、法律が施行された以上、今後、現場における外国人労働者の比率は確実に高まるだろう(日本の場合、保守・リベラルの対立は多分に情緒的なものであり、イデオロギー論争とは捉えない方がよい)。

日本では、すでに外国人労働者が140万人働いており、受け入れ拡大に伴ってあらたに入国する外国人は年間数万人と言われている。だが先ほど説明したように企業内には何と400万人もの社内失業者が存在している。

現在、外国人労働者が担っている業務を、社内失業者がそのまま引き継げるわけではないが、数字上は、社内失業者が労働市場に出てくれば、人手不足などすぐに解消するレベルの話なのだ。

 

財界トップが終身雇用見直しに言及した切実な理由

企業というのは、そもそも自ら新陳代謝していく存在であり、人材の入れ換えなしに時代の変化に対応するのは不可能である。諸外国の成長企業は常に人材の入れ換えを行っており、これが競争力の源泉になっていることは明らかだ。

身近なケースを想像してもらえば分かると思うが、何十年も同じメンバーで同じような仕事を続けている組織において、イノベーティブな発想が生まれてくるはずがない。

ところが日本企業は、同じ人材だけで変化の激しいこの時代に対応しようとしており、常識的に考えてこの仕組みがうまく機能するとは思えない。

先日、経団連の中西宏明会長とトヨタ自動車の豊田章男社長が、相次いで終身雇用制度の見直しについて言及した。終身雇用に関する話題はタブー視されてきた経緯を考えると、これはよほどの事態と捉えた方がよい。前から分かっていたことではあるが、いよいよ日本企業は終身雇用という負荷に耐えられなくなっている。

政府が70歳までの雇用義務化に向けて動き出したことから、企業は定年後の再雇用において大幅な年収引き下げや職種の転換を急ピッチで進めている。再雇用されれば、確かに書類上は同じ企業に継続して勤務することになるが、年収や仕事内容も大きく変わるとなれば、これは事実上の転職に等しい。

事実上の転職が強要されるのであれば、労働市場で幅広く人材をマッチングした方が、適材適所が進むのは明らかであり、これは企業にとっても、そして労働者にとってもメリットがあるはずだ。人の移動と経済成長には密接な関係があり、移動が活発になるほど消費も拡大する。終身雇用を維持できないのであれば、労働市場を拡大させる方向を目指すべきである。