ホリエモン独占告白「僕がロケット開発の先に見る夢」

日本は宇宙産業で一位になれるから
三戸 政和 プロフィール

大きな勘違い

三戸:ロケット事業はどのように始まっていったのですか?

堀江:最初はタカをくくってて、ロシアからロケットとカプセルを買ってくればいいと思ってた。ソ連の崩壊で宇宙技術がどんどんバーゲンセールされていて、宇宙ステーションのミールも売りに出ていたくらいだったから。そう思ってロシアに行ったけど、売ってくれなかった。考えてみれば、当然。ロケット打ち上げはビジネスだから、ロケット技術は彼らにとってはビジネスの根幹になる。

だから、宇宙に行くには自前でロケットを作らないとダメだ、みんなで作ろうとなった矢先に、間が悪いというか、逮捕されてしまった。勾留中に、仲間たちが小型ロケットとロケットエンジンの設計図を差し入れてくれて、僕は図面を見ながら、出たら「これを作ろう」って考えていた。取り調べでも、ロケットの話をよくしていた。

保釈されて、ロケット作りが始まるけど、完全にセルフメードだから、エンジンの部品を町工場に作ってもらったり、ホームセンターで買ってきたりして、自宅や仲間の家で組み立てた。

エンジンに火を入れるためは、液体酸素をタンクに入れてエンジンまで流さないといけないけど、液体酸素がタンクに入らないとか、エンジンに届くまでに蒸発しちゃうとか、最初はそんなレベルのトラブルばっかりで、それをみんなで知恵を出し合いながら解決して、少しずつ進んでいった。燃焼を確認するためのカメラはカシオのなんとかがいいとか、ボール盤という工作機械を使うときは軍手を使っちゃいけないんだっていうことも学んだ。

治具というエンジン組み立ての工具だって自分たちで作らなくちゃいけない。教科書に書いてないこともたくさんあった。そんなところから始まったから、ずいぶん来たなあという感慨はあるよね。

多忙な堀江氏をなんとか捕まえて「苦悶の日々」と「野望」を聴いた(@WAGYUMAFIA)

三戸:堀江さんだけじゃなく、イーロン・マスクも、アマゾンのジェフ・ベゾスも、多くのIT起業家がいま、宇宙ビジネスに乗り出してますよね。それはなぜだと思いますか?

堀江:誰も行ったことのないフロンティアに憧れるからだと思うよ。だいたいみんな同じ年代でしょ。ベゾスは64年生まれでちょっと上だけど、イーロンは71年、僕は72年。アポロ計画が終わる頃に生まれて、物心つく頃には人類が月に行っていた世代。

「スターウォーズ」や「機動戦士ガンダム」を見ながら育って、大人になったらもっと宇宙が身近にあって、人類はどんどん宇宙に行っているものだと思っていたのに、思いのほか、それが進んでいなくて、宇宙開発に夢がなくなっていた。だれかやっているのかなと周りを見回してもあまりいない。じゃあ自分がやるしかないか、お金もできたしって。

 

宇宙に夢がなくなった理由

三戸:アポロ計画のあと、アメリカはスペースシャトルを作ったし、多国間で国際宇宙ステーションもできた。なぜ、宇宙への夢は停滞していたんでしょうか?

堀江宇宙産業はほとんど公共事業と化してしまって、産業回りの人たちの財布を潤すためだけに存在しているようになり、いつまで経っても国が関与を緩めないからビジネスの展開も遅々として進まない。ITビジネスと比べると、そのスピード感は「バカじゃないの」といいたくなるくらい。

産業を立ち上げるのに最初に国が関わるのはいい。明治の日本も殖産興業として、国がリードしてさまざまな産業を立ち上げた。やがてそれらは民間資本へと払い下げられて、民間で競争し合うビジネスとなって成長していった。

だけど宇宙に関しては、ずっと国の関与が続いた。決まった予算を消化する形になるから、コストを下げるというモチベーションが生まれない。車でいうとずっとF1カーを目指して作り続けるみたいなことになる。

国がお金を出すためには「世界一のものを作ります」といわないとダメなので、高度な技術の中に、妙に古い技術が残って、アンバランスなスペースシャトルみたいなものが出来てしまう。シャトルのいくつかの痛ましい事故も、公共事業だったから起こったんだと思っている。

三戸:多くの人が、宇宙に関することは国がやるものだと思ってますよね。

堀江:それがおかしい。ほとんどの人が「自分は宇宙になんて行けない」って思っているでしょ。宇宙に行けるのは、桁外れの大金持ちか、「宇宙兄弟」に出てきたあの厳しい試験を大変な確率でパスした、体力や知力、人格に優れたエリートだけだと思ってる。それは違う。

三戸:宇宙に行くのは、エリートか大金持ちという常識もおかしい。

堀江:そう。そんな常識がはびこっているのは、宇宙がいつまでも民間に開放されなかったから。インターネットだって、国の関与が続いていたら、たぶんいまみたいにはなってない。民間に開放したことがキーポイント。でも、2000年代後半くらいから、宇宙産業も新しい潮流が少しずつ出てきた。アメリカはオバマ政権時代に、宇宙に関する、国と民間の区分けをうまく作った。 国が民間を後押しする環境を作って、民間活力で宇宙に出ていこうという時代になった。

だからいま、宇宙ビジネスは「ニュースペース」といわれて盛り上がってきている。

ZOZOの前澤友作氏が大金を出して、スペースXのロケットで月に行くみたいだけど、最近、数千万円くらい出せば宇宙に行けるというビジネスがでてきた。要するに、民間が入れば明らかに変わるし、宇宙に行くのに体力的なエリートである必要もない。宇宙に行くなんて、ジェットコースターに乗るくらいのものだから。