ホリエモン独占告白「僕がロケット開発の先に見る夢」

日本は宇宙産業で一位になれるから

たった3秒間の火からはじまった

手作りした最初のエンジンは、千葉県の鴨川に借りた小さな家のガレージではじめての火を噴いた。2008年5月17日。たった3秒間の最初の一歩だった。

それから、その小さな火を絶やさないよう、一歩一歩、歩みを進めて、ここまできた。2019年5月4日、北海道大樹町、午前5時45分0秒。点火されたロケットエンジンは、116秒間の燃焼を続け、ロケットの機体を高度113.4キロ上空の宇宙空間まで届かせた――。

今回のインターステラテクノロジズ社によるロケット打ち上げの成功は、民間単独としては国内初であり、「宇宙に関わるものは国主導が当然」という、日本人の多くが持つ固定概念を打ち崩すものだった。堀江貴文氏が60億円以上投じたことでも注目を集めたインターステラ社は、軌道投入機の開発と今回成功した観測ロケットの事業化フェイズに入るが、同社は今後、ユニコーン候補としても注目を浴びることになるだろう。

ユニコーンとは、非上場ながら企業価値が10億ドル(約1000億円)以上のスタートアップ企業で、その存在確率から、伝説のユニコーンになぞらえてそう呼ばれている。そのユニコーン企業がいま、次々と発見されているのが宇宙産業分野だ。宇宙産業分野は、国から民間へと主導権が移り、「ニュースペース」といわれる盛り上がりを見せている。

その筆頭がテスラ創業者イーロン・マスク氏の作った「スペースX」だ。大型ロケットによる宇宙輸送サービスを軌道に乗せて、企業価値は推計3兆円にまで跳ね上がり、その存在はすでにデカコーン(企業価値100億ドル以上)といわれている。

インターステラ社と同じ小型ロケット分野では、ニュージーランド発の「ロケットラボ」がいち早く事業化を成功させ、ユニコーン企業入りを果たした。人工衛星を使ったサービスを行う衛星分野でも、さまざまなベンチャーが台頭し、中でも、数千の超小型衛星による宇宙インターネット網構築を目指ししている「ワンウェブ」は、ソフトバンク単独でも10億ドルを出資し、ユニコーンとなっている。

インターステラ社のビジネスは、こうしたユニコーンになり得る潜在力を十分に持っている。堀江氏はこの事業の成功を長年、夢見てきたわけだが、堀江氏が成功の先に見つめるのは、インターネットが日常になったように、宇宙が日常になった世界だという。その真意はどこにあるのか? そしてそこで堀江氏は何をやろうとしているのか?

今回の成功の意味、そして未来について、堀江氏から話を聞いた。

今回のインタビュアーであり、MOMO3号機のスポンサーでもある三戸政和氏と
 

宇宙ビジネスは黎明期

三戸:改めてですが、打ち上げの成功、おめでとうございます。私は、民間単独初の打ち上げ成功の瞬間に立ち会えたのですが、ロケットが空にまっすぐに上っていく光景に胸が震えましたね。気付いたらダーって涙が出ていました(笑)。

いまの宇宙ビジネスは、かつてのITビジネス草創期から萌芽期の雰囲気があって、ソフトバンクの孫正義さんが2001年にADSLを無料配布したことからはじまった大きなブレークスルーが起きそうな予感に充ち満ちています。私はITビジネスの黎明期をプレーヤーとしては経験できなかったので、今回の宇宙ビジネスの夜明けに立ち会えたことは本当にうれしく思っています。

堀江:まさに孫さんの、ADSLをばらまいた話というのは、今回のロケットと同じ話。インターネットというのは元々、通信回線を電電公社のような国営企業が独占していたのだけれど、通信が自由化され民間企業が参入してきてだれでも安く簡単にアクセスできるようになった。だからいま、インターネットには百花繚乱のビジネスが花開いている。

これと同じことを宇宙でやろうというのが今回のロケット。

成功後にみんなでパシャリ

三戸:宇宙へのアクセスをしやすくするためということですね。多くの人はそこを理解していないと思うんです。堀江さんがただ宇宙好きで、金持ちの道楽としてロケットを作っていると思ってる。今日は、その本当の目的について話をしてもらいたいんです。

今回の成功で、インターステラ社は、開発系ベンチャーにはつきものの、いわゆるデスバレー(死の谷)を越えることができましたけど、百戦錬磨の堀江さんにとっても、ロケット開発のデスバレーは深いものでしたか?

堀江:想像以上に深かったね。ITビジネスの事業開発とは比べものにならない。でも今回、観測ロケットとしてはひとつの谷を越えられたし、越える方法が分かったのは大きい。イーロン・マスクのスペースXの大型ロケット「ファルコン1」は3回連続で失敗して、もう一度失敗したら破綻といわれるところまで追い込まれたけど、4回目で成功させて、死の谷を越えた。ウチは3回目で成功したって胸を張りたいところだけど、正直、ウチも今回の打ち上げに存亡がかかっていた(笑)

三戸:資金集めには相当苦労されました?

堀江:宇宙ビジネスでも衛星ベンチャーの人工衛星を使ったビジネスは、大型ロケットの人工衛星打ち上げサービスを使うので、ビジネスの形が見えやすい。だからお金も集まりやすい。一方、ロケットベンチャーは失敗したらゼロ。それも数千万から億単位のお金がゼロになる。だから投資に乗ってくれる先は限られてた。でも、今回の成功で、資金集めはやりやすくなるだろうね。