そこで、葬儀業者Bの見積もりが決して高くはなかったことに気づく。B社の最安値の見積もり(約25万円)の中の「火葬代5万9000円」って、こういうことだったのね。A社のプランに含まれるのは、東京23区外の公的な火葬場を利用した時のケースということだ。よくよく見れば、A社の料金表と見積もりには、「火葬代(市民料金分)含む」と書いてある。「市民料金分」でいけると思って疑ってなかったよ、「市民」じゃないけど!

余談になるが、この朝のことで、今も少し気になっていることがある。死亡確認が終わった後、父のモニターの電源はいつの間にか切られていたが、もうひとつのモニターは、やはり波形がフラットのまま、鳴り続けていた。家族がまだ来ていないのだろう。彼女(女性の名前だった)の死亡時間は何時になるのだろうか。

父を送りだした後、母と私はバスと電車を乗り継いで、自宅に戻った。9時になるのを待って、ドキドキしながら菩提寺に電話をかける。

「父が他界しました。年末ですし、東京の病院で亡くなったので、こちらで骨にして後日、納骨に伺います」

緊張気味に用意していた言葉を読み上げたが、反応は拍子抜けするくらい、あっさりとしたものだった。

「わかりました。ただ、骨にするだけにして、戒名はつけないでくださいね」

年末年始は超繁忙期

しばらくして担当の葬儀社から電話が入った。まずは火葬の日程を決めなければならない。火葬場は最寄りの火葬場一択だ。火葬は死後24時間後以降なら行うことができるが、29日はすでにいっぱいだった。

「年末は混み合うんです」

東京の火葬場は(ほかの地域もそうかもしれないが)、12月31日から1月3日まで休みに入る。30日もほぼ埋まっていて、初回の9時と最終の15時かという選択だったが、結局、いちばんの9時を選んだ。打ち合わせの際に、困ったことは2つ。父の本籍地がすぐにはわからなかったこと、そして、印鑑を忘れたこと。次の教訓にしたい。

結局、葬儀業者(と葬儀社)に支払った金額は、25万8800円。プラン代金が18万8000円、民間火葬場利用料が6万円。そして、追加で依頼したのがお別れ用の生花(1万800円)だ。プランに含まれる花は花束程度と聞いていたので、オプションで依頼した。支払いは、ウェブ上でクレジットカードを使って行った。

遺影の代金はプランに含まれていないが、これはかなり早い段階で用意していた。父が倒れるちょうと1週間くらい前、やはり父親を亡くしたばかりの友人が、「葬儀の支払いでいちばん不条理に感じたのが遺影の代金だ、葬儀社に依頼したら3万円かかった」と嘆いていたのだ。そんな話を聞いたばかりだったこともあり、父が倒れて2、3日後には、駅前の写真屋に写真の引き伸ばしを依頼していた。不謹慎上等。だってどうせいつか使うのだから。代金は1500円程度。額縁は2500円程度のものを購入したと思う。

火葬の日にかかった費用は火葬中の飲み物代と、火葬後の昼食代。お骨はお彼岸前に、菩提寺に収めた。お布施はケースバイケースだが、戒名(最低ランク)を含み25万円。位牌の代金は1万8000円。納骨の際の、墓誌への彫刻料を含む石屋への支払いは、母の兄弟が石屋をやっていることもあり、「無料でいい」と言ってくれたが、気持ち分だけお包みした。その後の会食は1人5000円いかない程度。親戚と父の近しい友人だけで人数も少なく、みな老人ばかり。お酒もあまり飲まず、食べ残した料理は折り詰めにして持ち帰った。

「親を見送る」という一大イベントだが、私にはもう一人、母が残っている。今年77歳になった母は、6年前に罹患した直腸がんも寛かいし、元気いっぱいだ。

その母も民間の保険には一切入っていない。今からでも入ったほうがいいのか、迷うなか、時間だけが過ぎていく。葬儀に関しては、今度は葬儀業者を介さず、なかなか印象の良かった、父の葬儀を担当してくれた葬儀社に、直接依頼したいと思っている。葬儀社のホームページにアクセスしたところ、「直葬」プランは、13万円となっていた。より安価におさえられるし、葬儀社の利益も大きいはずだ。今の時点ではこれがベストの選択だと考えている。