フランスの父親が育児に積極的なワケ〜男を「父にする」工夫の数々

かの国の「お父さん教育」に学ぶ
髙崎 順子 プロフィール

父親支援は国家戦略

我が家の夫が父親になってから10年後の今、フランスの「男を父親にする」プランはより進化している。例えば、当初「子どもが生まれた直後から」とされていた父親役のインストール作業が、「パートナーの妊娠中から」に早められている点だ。

フランスの妊娠出産医療費が国の医療保険で全額カバーされ、立て替えなし・自己負担無料であることは前回取り上げた。「親になるための準備」として、そこに全8回の出産準備クラスも含まれているのだが、そのうちの1回が、妊娠初期でのカップル面談に当てられるようになった。

医療保険のサイト内でこの面談の概要箇所は「親になること」とタイトルがつけられ、「親になるには、ある程度の時間が必要です」の一文から始まっている。だから早い段階から始めるべきなのだ、と。

ここでふと、疑問に思う人もいるだろう。なぜフランスでは医療保険が、国策として親支援、しかも父親の育児参加推進に取り組んでいるのか、と。

一義的には、父親の育児参加で産後の脆弱な母親の孤立を防ぎ、乳児の保健・虐待リスクが下がる、ということがある。

 

興味深いのはそれに続くもう一つの理由で、親支援は、医療保険の健全な持続にも役立つと考えられていることだ。成人の健康問題は幼少期の過ごし方に大きく影響を受けており、それは彼らの親のあり方に左右される。親が適切に育児をすることで子は健全な心身を育み、「健康」という資産を得る。結果、フランス社会全体の医療費の支出が抑制される、というロジックだ。

親を支援することは、決して「個人を助ける」ことに止まらず、社会全体にとっても意味があるという発想なのである。

2018年、現マクロン政権は「親支援の国家戦略」の名のもと政府5カ年計画を発表。医療以外にも教育達成度や男女平等、子どもの貧困対策など多角的な効果を見込み、より親支援を強化する方針を打ち出した。

よく話題になる35時間労働制も、労働生産性やワークシェアの観点だけではなく、サラリーマンの家庭生活を守る意味から、維持の必要性が論じられている。繰り返しになるが、育児には「時間」と「手段」の両方が必要と考えられているためだ。

子が生まれる前から、父親になる

数ある父親支援策の中で近年注目されているものに、発達心理学の知識とノウハウを取り入れた父親準備コースがある。子の誕生前の父親を対象にしたもので、その名も「未来のパパのアトリエ」(Atelier du futur Papa)。育児経験のある父親たちを運営主体としたスタートアップ企業だ。

現在開講されているアトリエは、2時間半コースと終日コースの二つ。「父親の第一の役目は、住居の中の安全を確保すること」と掲げ、乳幼児を迎える家の安全対策をまず指導する。

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