結婚や離婚の取材を長年続けているライターの上條まゆみさん。「子どもがいる」ことで離婚に踏み切れなかったり、つらさを抱えていたりする人の多さに直面し、そこからどうやったら光が見えるのかを探るために、具体的な例をルポしていく。

今回はアメリカ人男性と数年前に離婚した赤沢奈央さん(仮名・50歳)。アメリカ人の夫との離婚のあと、子どもに会えなくなっている女性の体験をご紹介しよう。

国際結婚は増加の一途

グローバル化の流れのなかで、国際結婚が増加している。1960年代は年間4〜5千件、婚姻数全体に占める割合は1%前後であったのが、1980年代後半から増え始め、現在は年間2〜3万件、3%前後で推移している。

愛の前に、国籍の違いなど関係ない。それはそのとおりだが、夫婦関係が破綻し、いざ離婚となった場合、国際結婚ならではの問題に直面することもある。その一つが、子どもをめぐる争いだ。

どちらの親が親権をもつか、面会交流はどうするか。国内結婚でも揉めるケースは多いが、国際結婚の場合は、より深刻な事態になりかねない。親権を得た外国籍の親が、国外へ子どもを連れて行ってしまう恐れがあるからだ。そうすると、日本に残された親は、思うように子どもに会えなくなる。しかし、単独親権、共同親権の問題は簡単に「黒か白」と言い切れる話ではない。

国際結婚件数が桁違いに増えていることに比例して、国際離婚件数も増加している Photo by iStock

アメリカ人の夫と3年前に離婚

50歳の赤沢奈央さんは、まさにその問題の渦中にいる。3年前にアメリカ人の元夫と離婚した奈央さんには、中学生になる娘が2人いるが、その親権は父親だ。

上の娘は、いまは奈央さんと会おうとしない。発達障害の診断を受けており、考えが白か黒かの極端に偏りがちな特性から、「片親疎外(注)」の状態にあるのではないかと奈央さんは推測している。

一方、下の娘は週に数回、交流している。奈央さん宅にごはんを食べに来たり、買い物に出かけたりなど、関係は良好だ。
しかし、元夫はまもなく娘2人を連れて、アメリカへ引っ越す予定だという。

「元夫は、アメリカでの仕事が見つかりしだい、娘を連れて日本から引き上げると言っています。親権をめぐる裁判中は、『高校を卒業するまでは日本にいる』と約束したのに、です。でも、親権をもたない私には、それを止める術がない。それがいつなのか、もしかしたら既に仕事は決まっていて、明日にでも日本を発ってしまうのか。私は、その恐怖と闘いながら毎日を過ごしているのです」

注)片親疎外:両親の別居・離婚などにより、子どもと暮らしているほうの親が、もう一方の親に対するマイナスなイメージを子どもに吹き込み、結果として正当な理由もなく片親に会えなくさせている状況