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米中貿易戦争は「本物の冷戦」なのだから、結局、世界経済を救う…?

行き詰まりの供給過剰状況は是正か

「悪の帝国は徹底的に叩き潰す」

5月9日、米中両政府がワシントンで貿易問題を巡る閣僚級協議を開始したにもかかわらず、米国は2000億ドル(約22兆円)分の中国製品に課す制裁関税を10日に10%から25%に引き上げた。

これは、ハノイで行われた米朝首脳会談の金正恩氏に対する「ちゃぶ台返し」、「お預け」とまったく同じ、トランプ大統領お得意の「最後通牒戦略」である。最後通牒だから、いわゆる「ビッグディール」(北朝鮮の場合は、完全な核廃棄)以外のものは受け入れないという明確な意思表示なのだ。

トランプ大統領が共産主義中国に求める「ビッグディール」とは何か? それはこれから述べていくが、その前に「米中貿易戦争」と呼ばれるものは、単なる経済的な戦争では無く、かつてソ連と米国が対立した「東西冷戦」と同じく「冷戦(コールド・ウォー)」であるということを改めて確認したい。

東西冷戦では、「どちらが先に核ミサイルのボタンを押すのか」という神経戦が続いた。1962年のキューバ危機のケネディvsフルシチョフの「どちらが先にボタンを押すか」という緊迫した駆け引きは、ケビン・コスナーが主演した「13デイズ」(2000年)という映画にもなっている。

この冷戦では人々が核兵器の恐怖に恐れおののいたものの、実際に銃で殺し合う現実の戦争はむしろ抑制された。

 

今回の「米中冷戦」も神経戦であることは同じだが、いわゆる東西冷戦とは違って3つの要素で成り立っている。

1)核の恐怖
2)サイバー戦争
3) 経済力の戦い

1)の「核の恐怖」は共産主義中国の核戦力が米国と比較にならないほど貧弱であることから、ロシアを巻き込まない限り(北朝鮮も米国にとって本当の意味の脅威とは言えない)、クローズアップされないであろう。

2)の「サイバー戦争」こそが今回の「米中貿易戦争」=「冷戦」の核心なのだ。中国の核兵器は、米国にとってそれほどの脅威ではないが、フロント企業などを通じた米国内への工作員の浸透ぶりや、広範囲にわたるサイバー攻撃には大いに脅威を感じている。

だから、関税よりもファーウェイをはじめとするIT企業および中国製IT製品に対する対策こそが米国にとって最も重要なのだ。関税の引き上げは、この部分における米国の要求を通すための「駆け引きの道具」といえる。

日本がサイバー戦争に無頓着で、どれほどのお花畑の中でいるのかは、当サイト2月19日の記事「本格化する『第2次冷戦」、日本が生き残るには諜報の強化が必要だ」で述べたとおりである。日本人は、70年もガラパゴスな平和が続いたおかげでボケているとしか思えない。

3)の経済力といえば、本当の殺し合いを行う現実の戦争では「兵站」=「武器弾薬・食糧の補給など」にあたる。この兵站は古代から重要視されてきたが、現代社会ではこの「兵站=経済力」が勝敗を決めるうえでますます重要になってきている。
 
典型的なのが「経済制裁」である。北朝鮮への経済制裁は、中韓ロなどの友好的な国々による「裏口」からの供給がありながらも。北朝鮮へボディーブローのように効いている。

世界経済がネットワーク化された現代では、その「世界経済ネットワークの枠組み」から排除されることは死刑宣告にも等しい。

つまり、米国の中国に対する関税引き上げは、「経済制裁」の一部であり、その行動を経済合理性から論じるべきではないのだ。

今回の「米中貿易戦争」の目的は、かつてのソ連と同じ「悪の帝国」である共産主義中国をひれ伏させることであり、その意味で言えば、トランプ大統領にとって「米中交渉」は、「米朝交渉」と何ら変わりはない。

そして, 今まさに、当サイト2018年9月24日の記事「米中冷戦、食糧もエネルギーも輸入依存の中国全面降伏で終わる」で書いたことが約8ヵ月の時を経て現実になろうとしていると考える。