スピード感と密度がケタ違い「ネット時代のドラマ」の新しい傾向

若者は「情報量の濃さ」を求める
石川 香苗子 プロフィール

ネット時代は「IPT」の濃い動画が強い

こうしたコンテンツは、動画の世界では「IPT(Information Per Time)が濃い」とされています。「IPT」は前述の明石さんが書籍『動画2.0』(幻冬舎)の中で提唱している概念です。一般的な「映像」をネット配信に最適化した「動画」にするうえで重要なことは、「情報の凝縮」にあり、インターネットのコンテンツに慣れ親しんだ若年層は時間に対する情報量が濃いコンテンツを求めるようになっている、と明石さんは分析しています。

ちなみに前述の『トドメの接吻』は、ビデオリサーチ社が発表している平均視聴率は7.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と決して高くはありませんでしたが、筆者も分析をサポートしているTVision Insights社による視聴者のリアルな視聴態勢を計測した視聴質調査では『西郷どん』『世界の果てまでイッテQ!』などに続いて4位と高い値を示しています。

 

こうしたIPTの濃いテレビドラマは視聴率が高くなくてもコアなファンを生む傾向が高いとされています。日テレ日曜ドラマ枠以外で例を挙げると以下があります。

1. 宮藤官九郎作品『あまちゃん』『いだてん』など:(スピード感の早いストーリーと、ふんだんに盛り込まれる時事ネタ、楽屋オチ)

2. 福田雄一作品『今日から俺は』など:(毎回有名ゲストが福田監督の過去作の役柄などでほんの数分だけ登場、アドリブが豊富)

3. 野木亜希子作品『アンナチュラル』『フェイクニュース』:(セリフを逐一聞いていないとついていけない膨大な情報量、医療・ネットニュースなど徹底したリサーチに基づく業界情報)

視聴率が高くないというのは、裏を返せば「すべての年齢層をターゲットとしたコンテンツではないから」と言い換えることもできます。つまり「IPT」の濃いドラマとは、マーケティングの観点でいえば、すべての年齢層にまんべんなく刺さっているわけではないものの、特定のターゲットにピンポイントで刺さっている質の高いコンテンツである可能性が高いといえるでしょう。

これは従来、幅広い年齢層を全方位的に取り込むマスメディアであったテレビが、ターゲットを絞り込んで刺しに行くニッチメディアとしての役割も担える可能性があることを示しています。

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