フィンランド政府が2年間ベーシックインカム給付をして分かったこと

誰も働かなくなるのか、それとも…
山森 亮 プロフィール

社会の基礎となる信頼を高める力

今回の実験で筆者が興味深く感じたのは、他者への信頼や、法制度への信頼が、ベーシックインカム受給者グループで、コントロールグループとくらべて有意に高かったことである。

類似の効果は、ナミビアやインドの実験でも報告されているが、これらの場合はコミュニティ全体が給付をうけていたため、コミュニティ全体が良い方向に変容した結果として解釈することができる。

これに対して、フィンランド全土で2000人という、給付者一人一人がいわば孤立した状態で給付を受けた今回のケースでも、信頼度が高まったことは、とても興味深い。

 

オランダでもユトレヒトなどいくつかの都市で、フィンランドと同様の給付実験が、計画されている。これは福祉の給付にあたって申請者を審査するケースワーカーたちの声が出発点だった。

制度の運営のために必要とされる厳正な審査を行うために「収入や健康状態などを偽っているのではないか」という疑いの目で申請者をみるのはもう沢山、という声である。むしろ申請者を信頼することの方が人間的であるし、社会もうまくいくのではないかという訳だ。

今回の結果に関しては、「世界的に注目されている社会実験に選ばれた」という感覚などが影響している可能性もあり、筆者は解釈を留保したい。それでも興味深い結果ではある。

さて、2月に行われた政府の記者会見では、担当大臣は先進的な社会実験を行ったことの意義を強調していたが、その大臣の目の前で、暫定の分析結果を報告した当の調査委員会の座長は、「実験は骨抜きにされた」と苦言を呈していた。

いったいどういうことだったのだろうか。この点については第4回で紹介するとして、次回第3回はいわゆる「財源」問題について見ていこう。

(つづきはこちら:世界的に注目を集める「ベーシックインカム」その財源の考え方)

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