ついに"新しい1キログラムの時代"が幕をあけた!
「物理法則」による新定義とは? 前編世界計量記念日は「質量維新」の記念日にもなった!
今日、2019年5月20日は「世界計量記念日」だが、今日から「キログラム」の新しい定義の運用が始まった。これまでの「キログラム」はリセットされ、まったく新しい、不変の質量基準の時代を迎えたのである。これは、実に130年ぶりの質量単位維新だ。
日本での度量衡(度は長さ、量は容積、衡は重さ)の総元締めは、産業技術総合研究所(産総研、つくば市)の計量標準総合センター(NMIJ)だ。ここで30年にわたって新しいキログラムの定義に取り組んできた藤井賢一さん(工学計測標準研究部門・主席研究員)に長時間のインタビューを行ったのは先月のことだが、先週、その藤井さんが出張先のフランスからメールを届けてくれた。
「今週はキログラムの定義改定などを協議する国際会議に参加するため、BIPM(国際度量衡局、フランス・セーブル)に来ています」
「今日(16日・木曜日)からは、キログラムの定義を司る質量関連量諮問委員会(CCM)の本会議が開催されています」
「主に、定義改定後、どのようにして世界に新しい質量の基準を普及させるのかについての議論が行われています」
メールに添付されていた写真の1点はその本会議の様子で、もう1点は会議場で撮影した藤井さんのショット。

その写真には、「Pavillion du Mail」というパネルの字が読めた。
これは、どういう意味なのかと質問を送ったところ、
「質量関連量諮問委員会が開催されているBIPMの大会議室の名前です。名称の由来を知っているフランス人はいなかったんですが、BIPMのMartin Milton局長が教えてくれました」
「1875年のメートル条約発足とともに、フランスのセーブルに国際度量衡局が設置されました。ここはパヴィヨン・ド・ブルトゥイユ男爵の所有地であったため、〈ブルトゥイユ男爵のパビリオン(Pavillon de Breteuil)〉と呼ばれてきたそうです」
「だが、それ以前、フランス革命の頃までこの一帯はメールさんという貴族の所有地だった。今回の国際会議に使われている大会議室には、そのより古い時代の呼称、〈メールさんのパビリオン(Pavillon du Mail)〉が使われているのだそうです。」

国際度量衡局がすでに144年を経ている歴史的な存在であることを物語るエピソードだ。