photo by Getty Images

日本人も驚愕する中国「996勤務=朝9時~夜9時×週6日」その実際

どこかでも見たIT産業のモーレツ文化

日本の変化

大手広告代理店・電通の新入社員だった高橋まつりさん(当時24)が、母親の幸美さんに「大好きで大切なお母さん さようなら ありがとう 人生も仕事もすべてつらいです」というメールを残し、都内にある電通の女子寮4階の手すりを乗り越えて飛び降り自殺を遂げたのは2015年12月24日のクリスマスの朝だった。

この事件は高橋さんが東大卒業の才媛で、彼女が母1人娘1人の母子家庭であったこともあり、社会を揺るがす大きな話題となり、電通のブラック企業的な体質が暴露されただけでなく、安倍政権が目玉政策として推進する「働き方改革」における時間外労働の上限規制の促進に影響を与えた。

電通本社が所在する東京都港区を管轄する三田労働基準監督署は、9ヵ月後の2016年9月に高橋さんの自殺は長時間の過重労働が原因であるとして労災を認定したが、その理由は次の通りであった。

すなわち、高橋さんは2015年3月に東京大学文学部を卒業して、4月に電通へ入社した。入社後はインターネット広告を担当する部署に配属されたが、6ヵ月の試用期間を経て10月に正社員になると、証券会社の広告業務も加わって業務量が急増し、1日2時間睡眠が続くような苛酷な生活を強いられていた。

このため、労働基準監督署は2015年11月上旬に高橋さんが鬱病を発症したと判断し、発症前の1カ月(2015年10月9日~11月7日)の残業が過労死ラインとされる「月80時間」を上回る「105時間」であったと認定したのだった。

「働き方改革」における時間外労働の上限規制は、大企業では2019年4月からすでに導入されているし、中小企業でも2020年4月から導入されるが、「残業時間の上限は、原則として月45時間・年360時間とし、臨時的な特別な事情がなければこれを超えることはできない」とされている。

また、臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、「年720時間以内、複数月平均80時間以内(休日労働を含む)、月100時間以内(休日労働を含む)を超えることはできない」となっている。

日本の高度成長期に当たる1970年代から1980年代前半には企業戦士とかモーレツ社員という言葉が生まれ、「24時間戦えますか」という栄養ドリンクのCMが流行し、長時間労働が美徳とされ、家庭や個人生活を顧みない滅私奉公がもてはやされた。

そうした時代と比較すると、「働き方改革」で示された時間外労働の上限規制は雲泥の差であり、時代の移り変わりを示すバロメーターという事ができる。

 

中国IT技術者の悲鳴

さて、前置きが長くなったので、本題に入る。3月下旬に中国で匿名の活動家がソフトウェア開発のプラットフォームであるマイクロソフトのGithub上に立ち上げた「996.ICU」と名付けられたプロジェクトに、中国のIT業界で働く技術者たちが次々と労働者の苛酷な残業実態の例を投稿し、過度な残業を強いるブラック企業と良好な労働環境を提供するホワイト企業をランク付けするための投票を行ったという。

「996.ICU」とは何を意味するのか。「996」とは「午前9時から午後9時までの12時間労働で週6日勤務」を意味し、「ICU」とは英語の“intensive care unit(集中治療室)”であり、過酷な「996勤務」によって体調を崩して病気になった人を治療することを意味し、比喩的に残業が多く非人道的で苛酷な勤務制度を指す。

「996」は、中国では“996工作制(996勤務制度)”と呼ばれるが、当初はインターネット業界が求人の条件としたのが起源であり、その当時は求職者たちが嬉々としてこの条件を受け入れたものであった。

しかし、これよりも厳しい勤務形態も存在した。

それは、「8117」と呼ばれ、朝8時から夜11時までの14時間労働を7日間続けるというもので、1週間に休息日は1日もないという勤務形態であった。かつての求職者たちは休みなく働けば、人並み以上にカネが稼げると自ら志願して「8117」を受け入れたのだった。

中国の『労働法』は次のように規定している。

1.毎日の労働時間は1日8時間を超えず、毎週の平均労働時間は44時間を超えない。
2.毎週1日の休息日を保証する。
3.最大残業時間は1日3時間を超えてはならず、毎月36時間を超えてはならない。
4.残業代は時給の150%以上を支払う必要があり、休息日の残業は時給の200%以上を支払う必要がある。また、法定休暇日の残業は時給の300%以上を支払う必要がある。

こうした労働法の規定を歯牙にも掛けないのが996であり8117なのである。