米中貿易戦争が起こす「ヤバい円高」と「日本株暴落」の危機シナリオ

超・円高局面の到来へ
大川 智宏 プロフィール

通貨戦争

5月の3週に入ってからも、日本株は淡々と下落する中で、中国株は急激な反転を見せている。その意味で、今回の人民元安は、2015年のチャイナ・ショック時のような一方的なリスクオフによる資本流出を引き起こしているわけではなく、純粋に政府の緩和政策(預金準備率の段階的な引き下げを実施するとの見方が強い)の思惑が通貨に反映された結果だろう。

〔photo〕gettyimages

世界景気の維持という観点で見れば、これは良いことだろう。仮にチャイナ・ショックの再来ともなれば、貿易摩擦自体は中国の白旗で終焉を迎えたとしても中国経済の崩壊とともに世界的なリセッションに陥る可能性がある。ひとつの区切りは付くが、誰も得をしない結末だ。しかし、現在のように中国がそれほど傷まず、大きな資本流出の混乱もないままで人民元の下落が進行すると、それはそれで困ったことが起こる。

 

今回、米国は懲罰的な関税を課すことで中国に対して各種の圧力をかけたいわけなので、それを通貨安で相殺されて中国がノーダメージで元気なままでいてしまうと、そもそも今回貿易戦争を仕掛けた意味がない。そこで、当然次の一手として出てくるのが、米国の利下げ観測である。利下げでドルが安くなれば、元高を促進させる材料になるからだ。

そして、意図せずこの緩和政策の方向性をちょうどよいタイミングでサポートするかのように、米国、中国の内需統計の値にも陰りが見え始めてきた。今週発表された両国の小売売上高が、両国ともに予想を下回ってしまったのだ。特に中国は深刻で、16年ぶりの低い伸びとなったことで市場に驚きを与えた。

図:中国小売売上高(対前年比)

拡大画像表示出所:Datastream

米国も、3月分は上方修正されたものの、4月は対前月比で増加すると予想されていたにもかかわらず、結局は減少する結果となった。何にしても、両国にとって相手を非難せずとも自国経済の保護という名目で緩和政策を実施できる大義名分を得たと見ていい。ここまでくれば、もう本来の貿易戦争の話ではなく、そこから一歩進んだ通貨戦争の話だ。

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