「徹底抗戦か自己改革か」米中摩擦巡り中国国内で広がる大激論の中身

当局は政権批判への転換が最も怖い
古畑 康雄 プロフィール

問題は自らにあり

これと同様の論調を展開しているのが、昨年、「中国の成長率は実際には1%台、さらにはマイナスの可能性もある」と指摘したことで知られる、中国人民大学の向松祚教授が行った講演とされる「13億人に警告 我々の根本的問題は米中関係ではない」という次のような文章だ。

 
〈「中国が世界の中心」などと言うべきでない〉
中国の学界、政界、メディアは米中関係についての議論にあまり熱心に参加すべきではない。ましてや一緒に大騒ぎし、米中はそれぞれ別の道を進むとか、中国が米国に挑戦するとか、人民元が米ドルの覇権に挑戦するとか、我々が米国に代わり世界を指導するとか、米国はすでに衰退したとか、21世紀が中国の世紀だとか、中国が世界の中心に立ったなどと宣伝すべきではない。
中国が多くの面で米国と相当な格差があり、特に国内では多くの民生問題が危機の瀬戸際にあることは言うまでもない、だが、たとえいつか中国が米国を追い抜いたとしても、大げさに自らをひけらかし、自己宣伝し、自らをおだてるべきではない。
世界の指導者かどうか、世界の舞台の中心に立ったか、世界と人類の進歩をリードするか、これは世界の人々が認め、人類の歴史が検証し、具体的で真の国際的な新秩序を基礎とし、具体的で着実な各種の政策を実施し、新たな国際的なガバナンスのシステムと枠組みにより保障することが必要である。大ぼらを吹いたり、威勢のいい言葉で喧伝したりすることはかえって逆効果だ。
〈米国との共存がベスト〉
米国の中国に対する強烈な反発は、我々のメディアや学者、政府当局者がナショナリズムをそそのかしたことと無関係ではない。中国の今日の最良の政策は依然として米国と共存し、相互に学ぶことだが、中国が米国から学ぶことのほうが多い。中国のメディアや学者は米国が衰退しているとか、中国が世界の中心に立ったなどというのは自らトラブルを招き、自ら敵を作る、無責任な言動だ。
米国は19世紀後半にすでに世界一の経済、工業大国だったが、米国が真に世界をリードしたのは第2次大戦後に国際的秩序を打ち立ててからだった。つまり米国が経済大国から世界を指導するまでには半世紀がかかったのだ。
米国は2度の世界大戦に勝ち、ソ連との冷戦に勝利したのは、大ぼらによるのではなく、真の科学技術と軍事、経済力によるものであり、特にその背後には制度や憲法による法治という大きな優位性がある。
米国の文化、教育の価値観の優位性は大ぼらから生まれたものではない。今日、中国のエリートの多くが子供を米国に留学させていることが全てを物語っている。
〈中国の根本的問題は米国ではない〉
中華民族の一員として、我が国と中華文化が世界で輝きを放つこと、中華民族が偉大な復興を実現することを願っている。だが、冷静に考えて、我々が今日米国と多くの格差があることは(事実で)、無責任の学者やメディアが吹聴するような、格差がない、まして米国を追い抜いたということは断じてない。北京、上海、広州などの大都市を離れ、農村を見てほしい。北京市の中心を離れ、6環路の外を見てほしい、毎日10時間、週6日働く出稼ぎ労働者、都心に入っても教育や医療が受けられない子どもたちを見てほしい、無一物の貧しい農村の状況を見てほしい、我々の教育と医療の状況を見てほしい。
我々の根本的問題は米中関係ではない、我々の根本的目標は米国に代わり世界を指導することではない、ましてや米国に挑戦して転覆しようとすることではない。我々の目標は十数億の中国人が学ぶ場所があり、病気を治す場所があり、老後を過ごす場所があることだ。学者、メディア、政府当局者は理性的、理性的、さらに理性的に、客観的、客観的、さらに客観的になるよう心から忠告したい。一時の激情にかられて、国や民族、子孫に災いをもたらしてはならない。