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ミサイル発射が示す「北朝鮮の傲慢な狙い」〜核は維持、制裁は緩和…

まだまだ続く「非核化」なき外交の季節

今年2月末の第2回米朝首脳会談が、具体的な非核化の合意なしに終わったものの、外交の季節は続いている。米朝双方が協議の継続を望んでいるからにほかならない。

2018年1月以降醸成された「融和ムード」には既に陰りが見えているが、外交路線を維持しようという努力は続いている。ただし、北朝鮮はその間も軍事開発を止めておらず、機会があれば徐々にそれを加速していくであろう。そして、その兆候は見え始めている。

結局、今回の記事でも過去2回の記事で示した同じ結論を繰り返すだけだ。

 

「強力な軍事力だけが平和を保障する」

最初に強調するが、朝鮮半島における軍事的現実になんら変化はない。北朝鮮は「朝鮮半島の非核化」に合意してはいるが、自らの軍事力を何ら弱めてはいない。

まず、意図について見ると、2019年4月12日、北朝鮮の最高指導者である金正恩は、最高人民会議第14期第1回会議での施政演説の中で「強力な軍事力に依拠してのみ平和が保障される」と明言した。

2018年(昨年)の6月12日にシンガポールで行われた米朝会談の後、北朝鮮は同年11月16日に新規開発した先端戦術兵器の試験を行い、そして今年4月19日には、初の朝露首脳会談前に新型戦術誘導兵器試射を行った。

米朝協議が進行している間は、米国全土を射程に収める大陸間弾道ミサイル(ICBM)ではなく、あくまでも戦術的で限定的な兵器の試験を行うことにより、軍事開発を継続するということであろう。

特に、米国のトランプ大統領が「短距離ではないから脅威ではない」といっている以上、北朝鮮としては、米国に向けたICBM発射という「レッドライン」を越えない挑発行動であれば直接の軍事攻撃を受けない、という一定の自信と安心感を維持できることになる。

さらに、新型戦術誘導兵器試射に先立つ4月16日には、金正恩は新しい肩書の「共和国武力最高司令官」として朝鮮人民軍航空反抗空軍第1017軍部隊戦闘飛行士の飛行訓練を指導した。

この訓練を報じた『労働新聞』のウェブサイトには、2機のMIG-29が飛行する写真が掲載されており、制裁にもかかわらず戦闘機用燃料が保持されていることがわかる。

さらにいえば、朝露首脳会談後の5月4日、北朝鮮は元山で短距離弾道ミサイル及び長射程砲等の試射を断行した。発射されたミサイルは固体燃料を使用するロシアの9M723/SS-26(「イスカンデル」)に酷似している。5月9日に亀城で発射されたミサイルも恐らく同じミサイルであろう。

固体燃料を使用する北朝鮮の短距離弾道ミサイルとしてはKN-02(「トクサ」)が確認されているが、4日及び9日に発射されたミサイルが「イスカンデル」並みの能力を有するものであるならば、脅威度は一層増すことになる。

このような技術をロシアが直接北朝鮮に提供したのか、同技術を持つ他の国が提供したのか、はたまた北朝鮮が独自に開発したのかは現時点では確定できない。いずれにせよ、北朝鮮のミサイル能力が向上したことは一層明白になったわけである。北朝鮮は巡航ミサイルも開発しており、今後新たな能力を披露するであろう。

なお、短距離であっても弾道ミサイル発射は明白な国連決議違反であり、南北9.19合意の一部である軍事分野に関する合意にも違反する。

さらに、4日には240mmMLRS及びKN-09発射も披露されており、北朝鮮の米韓に対する「限定的抑止力」が少なくとも維持されていることが窺われる。

結局、2018年11月に北朝鮮の外務省外交研究所所長が警告したように、北朝鮮は「新たな並進路線」に回帰したか、または同路線が少なくとも維持されていることが明確になったといえる。