「励まし」が足を引っ張ることも。まずは共感を!
しかしなぜ、励ましに効果がない一方、「こんなはずじゃなかったよね」「死にたい気持ちにもなりますよね」といった、どこか曖昧な(そして「死」を含む不穏当な)言葉が効くのでしょうか?
励ますつもりで「そんなこと言わないで」などと言うと、本人は「自分のことをわかってくれていない」と感じるかもしれません。また、励ますためのエネルギーが必要ですから、介護者も疲れます。無理をすると言葉がウソっぽくなってしまい、お年寄りにもそれが伝わるので、励ましの言葉は効果を失ってしまうのです。
誰でも歳を取れば、体力が落ち、持病のひとつも抱え、膝や腰が痛くなり……と不自由だらけになります。加えて認知症になれば、できないことが増え、わからないことも多くなり、不安のなかで過ごすことになります。そしてついには住み慣れた家を離れ、施設に入ることになり……という経験をするお年寄りは、少なくありません。
そんなお年寄りの悩みやつらさは、色々な記憶や感情が絡み合っていて、割り切れるものではありません。本人にだって、取り返しがつかないことはわかっているのです。具体的に理解して解決しようとするのではなく、漠然と共感して“気持ちはわかる”と相手に伝えることが、グチや不平不満を鎮める第一歩なのです。
おおざっぱな表現で、いっこうにかまいません。認知症の人の揺れ動く気持ちに沿って、介護者も一緒に揺れ動いてみるのがいいと思います。それこそが、介護において大切な「寄り添う」ということではないでしょうか。
※この記事は『認知症の人がパッと笑顔になる言葉かけ』をもとに作成しました。

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