「令和おじさん」の存在感
永田町で現在熱く繰り広げられている“政治ゲーム”と、その背後に見え隠れしている問題をレポートしたい。
いま話題になっているのが、菅義偉官房長官の「今後」にまつわる話だ。
5月の連休明け、菅長官は訪米し、北朝鮮問題などをめぐってペンス副大統領、ポンペオ国務長官ら米政府要人らと会談し、12日に帰国した。
そもそも、この外遊は異例であった。
官房長官たる者、官邸に常駐し、不測の事態に備えるものとされる。しかし菅長官は、4日にわたり官邸を留守にしたわけである。
もちろん例外がないわけではない。菅長官自身、2015年10月には米領グアムを訪問し、在沖縄米海兵隊の一部が移転する米軍基地などを視察したこともあった。
だが、安倍晋三首相とトランプ大統領の蜜月下、今回の派遣にはさしたる意味がなく、なぜこの時期にわざわざ外遊したのか、永田町と霞が関の住人は首をかしげた。
これに加えて、なおのこと注目される要因もあった。4月1日に新元号「令和」を発表する任を務め、「令和おじさん」と呼ばれて一躍世間の注目を集めた菅長官が、「ポスト安倍」としての存在感を高めていることだ。

今回の外遊に際して、さる政府関係者が「これは総理の外遊にも等しい」と持ち上げたのは、その証左である。
「安倍首相が、菅さんへの禅譲の準備を始めたのではないか。この外遊は、そのための地ならしだ」
この政府関係者は、外遊の背景についてそう解説した。こうした見方に賛同する声は少なくない。実際、自民党のキーマンたちは、こんな発言をしている。
「経歴や内閣を支えてきた実績から言えば、(菅長官が、首相候補の)有力な一人であることは間違いない」(石破茂元幹事長)
「菅さんのような、土の匂いや積極果敢な腹の据わった人の方が『ポスト安倍』にはよいのかなと」(古賀誠元幹事長)
「この難しい時代に官房長官を立派にこなしている。素直に評価に値する。(首相の任に)十分耐え得る人材だ」(二階俊博幹事長)
自民党のお歴々が太鼓判を押す以上、筆者もつい、そうなのかと思いかけた。しかし、これは読みが浅かったようだ。別の政府関係者はこう語る。
「元号発表にしろ、今回の外遊にしろ、これは安倍首相の深慮遠謀だ。ポスト安倍候補として菅長官を押し出し、ほかの候補を蹴落とさせたうえで、最終的には菅長官にも諦めさせるか排除して、『やっぱり自分しかいない』という状況を作ろうとしている。言うなれば、菅長官は『当て馬』だ」