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独女が83歳認知症父の介護…危機を救った介護保険の「利用法」

「おでこが骨」父のケアと仕事との両立

フリーライターの田中亜紀子さんは現在83歳の父の運転をやめさせることに四苦八苦した。認知症の中でもピック病だということが判明し、専門病院の医師のひと言で1年にも及ぶ運転をめぐる攻防は終わりを告げたが、介護生活は終わらない。独身でライターという不規則な仕事で生計をたてており、かつ介護はほぼ一人でやらなければならない状態だった。

ある事件を機に最大限の危機が訪れ、そこで多くの介護保険サービスを知ったという田中さんに、意外と知られていない、便利な活用法についてまとめてもらった。

〇ある事件=「認知症の父が血の海の中で驚きの姿になっていた話」の記事はこちら

 

「小規模多機能」って?

2018年の夏、認知症(ピック病)の父親が、帰宅してしばらくすると、家が血の海になっていた。転倒で額の皮膚を大きく破損したことに動揺し、患部の周囲を自らはさみで刈り込み、気付いた時には「おでこが骨」になっていたのだ。詳細は別の記事に記したが、そこでは書けなかった「介護の危機を乗り越えた術」をお伝えしよう。

「来週には、どこか預かってくれる施設か病院を探し、退院してください」。

上記の状態の父を入院させてくれる病院をようやく見つけ、安堵したのもつかの間、約1週間で、医師にこういわれてしまった。おでこが骨の認知症患者とはいえ、命に危険はなく、手術ができるまで肉芽組織が育つのを待つだけの父を入れてくれる病院はほとんどない。困って相談したケアマネさんと病院のソーシャルワーカーさんが別々に考えた結果、一致したのが介護保険下で使える、看護師のいる「小規模多機能型居宅介護(以下、小規模多機能)」の施設への宿泊だ。

小規模多機能とは初耳だった。それは06年から始まったサービスで、「小さい規模で、多くの機能がある施設」という意味。高齢者が住み慣れた家や地域で生活することを支援する地域密着のサービスで、入浴や食事などを行う「通い」を中心に、「宿泊」機能、「訪問」よる支援など、従来は別々の事業者が行うサービスを一括して行う場所だ。通常の「小規模多機能」と、看護師が常駐し訪問看護も行う「看護小規模多機能」の2種類があり、うちは後者を勧められたというわけだ。

説明を聞きに行くと、隣の駅前にあったそこは、大きな個人宅のようでまだ新しく、館内が清潔で匂いのないことに好感を持った。

中にはいると、1階が食事やデイサービスで使うスペースで、2階にはテレビつきの個室とオープンスペースがあり、9人ほど宿泊できる。小規模多機能を使うためには、まず契約の必要があるが、利用料は介護度によって違う定額制で、年金額などで自己負担の割合が変わる。そこに認知症加算、看護体制強化加算など、その人に合わせたもろもろの加算がある。

定額料金は国が決めた単位数に市や区など地域の係数をかけて決まり、看護小規模多機能のほうが、通常の小規模多機能より高くなる(注)。うちの父は当時介護1だった。見学に行った施設では、月額利用料金の自己負担額は1割だと1万3156円。しかし父は自己負担額が2倍になり、各種の加算もあった。食事や宿泊料金は施設によって異なり、見学した施設は朝食が300円、昼と夜の食事が700円、宿泊料は一泊2500円だった。

注 我が家がお世話になっている看護小規模多機能の月額利用料金は、自己負担額1割の場合、要介護1 \13,156 要介護2 \18,408 要介護3 \25,876、要介護4 \29,348、要介護5 \33,197で、これに各種加算がある

もし介護1の状態の父が1か月フルに宿泊したら?と聞くと総額16万円代になるという。有料老人ホームは月20万以上かかるところが多いし、病院も大部屋が空いていなければ1週間ですぐ10万円を超えるので、これは安いといっていい。ショートステイは何か月も前から予約しないと無理なので、この日程がせっぱつまった状況では不可能だ。

説明を聞くにつけ、不規則な仕事で、助っ人がいない私には向いているように思われた。父が術後、自宅に戻れても、私が一日つきっきりで見ることは無理だ。ここなら食事・宿泊以外は料金が加算されず、空いていれば週何回でも通える。しかも、私の帰宅が遅くなる時には連絡をいれれば時間延長、部屋に空きがあれば宿泊も可能だという。また父親が在宅時、私の帰宅が遅れ、不安があれば訪問して見守ってくれ、緊急の場合は24時間対応してくれるという柔軟さなのだ。

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