現在テレビ東京系で“絶賛”放映中の『きのう何食べた?(以下、「何食べ」)』は、日々の何気ない食事風景を通して、中年同性カップルの日常生活を描いたテレビドラマだ。
原作は、よしながふみの同名マンガ。
「何食べ」は青年マンガ誌「モーニング」で2007年から連載中で、単行本は15巻を数える人気作だ。
12年間に渡る長期連載のため、「何食べ」は“愛読者それぞれの心の中に確固たるキャライメージが出来上がってる系”の作品となっている。
このようなマンガの実写映像化は、わりとやっかい。
ピタッとハマれば原作者や制作側、視聴者も全員幸せになれるが、そうでない場合にはSNSを中心に大荒れするのが昨今の流れだ。
それを踏まえて云えば、今回の「何食べ」ドラマ化は大成功である。
冒頭のお決まり表現“絶賛”は大げさではない。
まず、公式アカウントで配役が発表されるたびにツイッターのいいねとリツイート数がすごいことになった。
第1話の放映時には「#何食べ」が世界トレンドにランクインしたほどの注目と高評価を得たし、話数を重ねても視聴率は依然絶好調だ。
テレビ東京の見逃し配信の再生数は、歴代最高を記録したという。
その理由のひとつに主役のケンジ&シロさんという同性カップルを演じているのが、内野聖陽(ケンジ)と西島秀俊(シロさん)という、NHK大河ドラマにも出演する演技と相貌に長けた超一流のベテラン人気俳優だということが挙げられる。
いつもはクライムサスペンスや時代劇で重厚な演技を披露する、そんなふたりが劇中で、ものすご~く、すご~くかわいかった。
おふたりとも役者として新境地を切り開いたんじゃなかろうか。
さらに第7話で登場するシロさんの友人カップル役には、演技派として名高い山本耕史と若手注目株の磯村勇斗を配して脇まで万全だ。
つまり芝居が上手い、いや、 美味くて、旨くて、甘(うま)いなぁ。
思わずご馳走さまと呟いてしまうくらいに味わい深い。
深夜ドラマの30分枠で、しかもゲイという難しい役どころであるにもかかわらず、内野・西島・山本という主役級役者が3人揃って出演をオーケーしたのは、ひとえによしながマンガが内包する物語の力だと思う。