島沢優子さんは、スポーツや教育関係に詳しいジャーナリスト。長らく教育の現場を取材し、『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実』『部活が危ない』『世界を獲るノート アスリートのインテリジェンス』など数多くの著書がある。

今まで様々な指導者に出会い、子どもたちを伸ばす教育や育児について実感するとともにエビデンスを学んできた。保護者向けのセミナーや講演も多く、個々の相談にも応じる。その島沢さんが提案するのが、今までの凝り固まった思想から一歩踏み出した「アップデートした子育て」だ。連載「子育てアップデート~子どもを伸ばす親の条件」にて、具体例ととも共にお伝えしていく。

第2回は、いじめられても不登校にならなかった子どもたちに聞いた、「登校できた理由」の「共通点」について探る。

連載①「高学歴の親が子育てに苦労するってホント?案件」はこちら

「1000の嫌いよりも1の大好き」

ソックスから、パラパラと砂がこぼれてきた。
「これ、どうしたの?」
洗濯機を背に母親が尋ねると、小学5年生のA子は(しまった)というような顔をして、うつむいた。

「ママね、怒ってるんじゃないんだよ。砂は自分で入れたの?それとも……」

A子は、同じクラスの女子数人からいじめを受けていた。

ノートには「死ね」「かっこつけ」「大キライ」の落書き。机の上に雑草を山のように盛られ、体育の時間が終わって教室ではこうとしたくつ下には大量の砂が入れられていた。クラス委員長で成績も良いため、疎まれていたようだ。

しかし、頑張り屋のA子は不登校にならなかった。
「楽しいこともある。嫌なことばかりじゃないから行く」と言うのだ。

ごくたまに気持ちがついてこない日は学校に行かない。休むのは木、金が多かった。そのまま4連休できる。母親と家でパズルやゲームをしたり、買い物や日帰りの旅行にも出かけたりした。

担任に恵まれたこともプラスに働いた。休む理由など一切聞かれず、数日ぶりに登校してもごく普通に接してもらえた

年間通算30日以上欠席すると「不登校児」にカウントされる。だが、A子は結果的に5年、6年とも30日に満たなかった。

それでも相当無理をしているはずだ――不安を覚えた母親は、6年生の途中で娘をカウンセリングに連れていった。

「どうして学校に行けたの?」

カウンセラーに尋ねられたA子は、はにかんだような笑顔で答えた。

1000個の大キライは、ひとつの大好きに負けちゃうんだ

母親は「ママはA子ちゃんが大好きだよ」と言い続けていた。

「髪の毛はさらっさらだし、目はくりっくりでしょ?体はぐにゃぐにゃでブリッジもできちゃう。すごいねえ」
こんな母の言葉や「大好き」が、学校へ行くガソリンになった

子どもの不登校は増えている。

文部科学省が実施した2017年度の問題行動・不登校調査によると、不登校の子どもは、全国の国公私立の小中学生合わせて前年度比6.1%増の13万3683人に上り、4年連続で増加した。そのうち小学生は10.4%増の3万448人だという。

でもA子さんは、「不登校児」にはならなかった。