大好評! 講談社の動く図鑑「MOVE」の公式サイト「WebMOVE」からの出張連載。第3回は、見た目のインパクトが最強の「オオカミウオ」! 迫力ある頭部のヒミツに迫り、さらに「味」も確かめます!
2015年の夏、僕は北海道の知床へオオカミウオという魚を捕まえに行った。

オオカミウオはオホーツク海などの冷たい海に棲む巨大なギンポの仲間で、体長は大きなものだと150cm以上にも達する。オヒョウと並ぶ北海道最大の肉食魚だ。
そして、なによりの特徴はその顔立ちにある。
細長い魚体に不釣り合いなほど大きくふくれた頭部はシワくちゃで、たくさんの太く硬い歯が並ぶ大きな口を持っている。
とにかく顔面のインパクトがすさまじい魚だ。
この猛獣じみた顔立ちが名前の由来となったわけだが、僕はむしろオオカミというよりはSF映画の怪獣のようだと感じる。
ここでは、この魚を実際に捕まえてみてわかった彼らの秘密を公開しよう。
泳ぐのは苦手! かわりに岩にはりつくぞ!
さて、いよいよ漁師さんの協力の下、オオカミウオ捕獲作戦を開始する。
といっても特別なことをするわけではない。普通に釣り針にエサをつけて釣り上げるだけである。
ただし、道具は少々工夫する。
オオカミウオは頭こそ立派だが胴体はウツボのようなニョロニョロ体型。こういう魚はあまり遊泳力が強くない。

しかしウツボにせよウナギにせよ、こういう体型の魚は遊泳能力に代わる特技を持っている。
岩穴へ潜り込んで隙間の形に合わせて胴体をくねらせ、踏ん張るように身体を固定する技術だ。捕獲するとなると、この能力がとても手強い。
体長1mを超えるオオカミウオが岩穴に逃げ込んだら、人間の力で引き抜くことは困難だろう。
そうならないよう、オオカミウオが針に掛かったらすぐさま力まかせにその巨体を海底から引き上げなければならない。
そのため、釣り糸は人間がぶら下がれるほど強くて太いマグロ用の製品を選んだ。