『蒙古襲来絵詞』

その実験、「孫子の兵法」に学ぼう! 理系のための卒論術

実験とはこれすなわち戦である
ブルーバックスでアルバイトをしているサナです。大学4年生の皆さんは、「そろそろ卒業研究に本腰を入れなきゃな~」などと思いながら毎日忙しく研究をしているかと思います。

しかし! 戦に「戦術」が必要不可欠なように、実験・研究にも「戦術」があるのです。戦の天才・古代中国の孫子の言った言葉は、研究生活にも応用ができる!

今回は、このたび重版が決まったブルーバックス『理系のための「即効!」卒業論文術』(著:中田亨)から、卒業研究の「戦略」のキモをご紹介します!(記事のなかで太字にしている部分は、上記書籍で抜粋された『孫子』の言葉です)

速戦速勝をめざせ

「戦争は一日ごとに膨大な費用がかかるがゆえに、速戦速勝こそが正しい戦略である」

結果がまずいから戦争を早めに切り上げる。これは戦略としてありえます。ですが、戦(いくさ)上手だから戦争を長引かせる。これはありえません。

まるで居合抜きのように速く、強く、鋭く! Photo by gettyimages

実験もまったく同じです。「とりあえずあれを。ダメならこれを」と出たとこ勝負に頼っていつまでも続けていては、時間と労力と資金を食いつぶしてしまいます。

やらなきゃいけないことだけをやる。これが実験を成功させる唯一の道です。

自然を拷問にかけろ

「速戦速勝のためには、一気に決着をつけることだ。決戦で勝つためには、戦う時刻と場所が自軍にとって最も有利な条件でなければならない」

一気に決着をつけるためには、自軍を最も有利な条件に置き、敵の主力軍をそこへおびき出すように作戦を立てます。平凡な条件では会戦せず、また、敵の「雑魚」は相手にしないのがよいのです。

この考えは、科学者ロジャー・ベーコンの「自然の心理を知りたければ、優しく尋問してもだめである。自然を拷問にかけるべし」という言葉に通じます。

ロジャー・ベーコン Photo by gettyimages

ある現象を観測したいからといって、平凡な材料を普通の机の上に並べて、家電製品を使って実験しても、うまくいきません。超高圧、超高温、超高速、極小、極短、膨大、清浄……。何らかの点で極端な条件に自然を追い込み、真理を「自白」させるのです。

なかには100年以上も続いている実験もあります。北海道の小樽港で、コンクリートの経年変化を調べるために続けられている実験です。「超長」という極端性を武器にして、自然の真理を知ることです。(関連記事:「明治」から「平成の次」まで100年以上続く「実験」があった​