2019.05.20

『少年ジャンプ』が模索する、デジタル漫画の「新たな黄金法則」

『ジャンプ+』運営者が明かした
ラリー遠田 プロフィール

自信作

――『少年ジャンプ+』で籾山さんが担当されている自信作の一つが『アラタプライマル』(原作:及川大輔、画:村瀬 克俊)だと伺っています。2027年に世界同時大停電が発生し、主人公たちが原始時代へタイムスリップしていた、というサバイバルミステリー作品。5月2日に単行本の第一巻が発売されるそうですが、見どころはどういうところでしょうか?

籾山:作画の村瀬先生はもともと『少年ジャンプ+』で『カラダ探し』(原作:ウェルザード)というホラー系の作品を連載していました。これは『少年ジャンプ+』を引っ張ってくれた看板作品で、読者の数も多く、コミックスも累計250万部を超えました。

ただ、その連載が終わって考えたのは、「国民的な作品」と呼べるかというと、まだまだ課題があるな、ということでした。だから、次はもっと貪欲にチャレンジしたいという気持ちがありました。『カラダ探し』はすごく刺激が強くて、ウェブで読まれることを狙った作品でもあったんですが、足りない部分もあった。

考え抜いた末、少年漫画的な要素……つまり主人公の成長といった要素が欠けていたんじゃないかと。そこで、キャラクターが強くて、ストーリーも骨太で読者が熱中できる、伝統的なジャンプ作品の良さをそこにかけ合わせれば、さらに面白い作品が生まれるのではないかと思ったんです。『アラタプライマル』はそういう狙いで作りました。(冒頭試し読みはこちらをクリック

なぜ原始時代にタイムスリップしたのか、という大きな謎が作品の下地としてあるなかで、主人公が試練を乗り越えるたびに成長をしていく。ウェブ的な「ひき」と少年漫画の魅力が組み合わさった作品だと自負しています。この作品を通じて新たな「ヒットの黄金法則」を発見できれば……と力を注いでいるところです。

――紙の雑誌の編集からデジタルの部署に移ったのは籾山さんにとって大きな変化だと思うのですが、今のお仕事は楽しいですか?

籾山:めちゃくちゃ楽しいですね。漫画作りもできるし、システム作りもできる。あと、やることがすべて初めてのことなので面白いですね。何度も繰り返しているように、まだ正解がない世界じゃないですか。僕は旅行好きなんですけど、あまり他人が行っていないようなちょっと変わったところに行くのが好きなんです。それに近い新鮮な感じがありますね。

例えば、漫画の表現に関しても、昔と同じで変わらない部分もあるけど、変わる部分が半分くらいあるんですよ。それを使って才能のある作家さんが新しい表現をすることで、どんな面白い漫画が生まれるのか、というのは楽しみです。

――とはいえ、ウェブの世界は紙の雑誌以上にライバルも多いし、厳しい世界ですよね。

籾山:『少年ジャンプ+』がはじまって4年くらい経ってますけど、多少の挫折感は感じています。本当は今ぐらいには大成功を収めて圧倒的な存在になっていないといけないんですけど、現状はそうではないので、ちょっとヤバいかな、という焦りはあります。

でも、ジャンプ文化で育ったからでしょうか。困難があったときの方が、燃えるんですよね(笑)。

今は本当にデジタル漫画の戦国時代みたいな感じで、勝てば江戸幕府が作れる状況じゃないですか。そのなかで、『少年ジャンプ+』は現状、今川義元ぐらいのポジションだと思うんです(笑)。

新しいこともやりつつ、『週刊少年ジャンプ』の作品を読めるっていうサービスもあって、今までの伝統を受け継いでいる部分もある。結構ラッキーな立場でやっているなとも自覚しているので、早く『ジャンプ+』を『週刊少年ジャンプ』と肩を並べる存在にまで成長させたいですね。

(撮影/丸山剛史)

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