『少年ジャンプ』が模索する、デジタル漫画の「新たな黄金法則」

『ジャンプ+』運営者が明かした

「まだ明確な答えが出ていない混沌とした状態だからこそ、面白さを感じています。先輩方が並々ならぬ努力で『ジャンプ黄金期』を築いたように、自分もウェブ漫画の世界で新しい『勝利の方程式』を見つけて、乱世の時代を勝ち抜きたいと思っています」

漫画業界にデジタル化の波が押し寄せている。漫画雑誌の売上が低下傾向にある一方、コミックスの電子書籍の売上は右肩上がりで、出版社や新興ネット企業は次々に漫画アプリを立ち上げて、新しい読者を獲得しようとしている。

そんななか、世界最大の発行部数を誇る漫画雑誌『週刊少年ジャンプ』の編集部も、新たな漫画の在り方を模索している。

令和時代の漫画はどうなるのかを知るために、漫画雑誌アプリ『少年ジャンプ+』の立ち上げに参画、位置情報を使ったユニークな漫画拾い読みアプリ『マワシヨミジャンプ』などを手がけ、「デジタルと漫画の融合」を進めている集英社の籾山悠太氏を訪ねた。

 

ジャンプにも新しいアイデアを

――ここ数年で、数多くの漫画アプリが誕生しました。いまや「紙ではなくスマホで」漫画を読むという読者も増えていると思います。漫画の姿が大きく変わろうとする変革期において、既存の出版社がこの状態をどうとらえているのか、またデジタルの世界でどのような取り組みを行っているのかをお聞きしたいと思います。

まず、籾山さんのこれまでの仕事歴と、現在どんなことをされているのかを教えていただけますか。

籾山:入社してから最初の1年間は『月刊少年ジャンプ』の編集部に、それから異動になって『週刊少年ジャンプ』の編集部に4年在籍していました。その後、2010年に「デジタル事業部」に異動し、電子書籍の販売などに携わり、2012年に『ジャンプBOOKストア!』という電子書籍の漫画を売るアプリを立ち上げました。

その後、2013年に『ジャンプLIVE』という漫画雑誌アプリがリリースされたのですが、それを引き継ぐ形で2014年に『少年ジャンプ+』という漫画雑誌アプリをはじめました。同時に再び『週刊少年ジャンプ』編集部に異動となり、現在は『ジャンプ+』の運営に携わり、4つの作品を担当しています。

――籾山さんが手がけて、今年1月に公開された新アプリ『マワシヨミジャンプ』は大変話題になりました。位置情報を利用して、マップ上に「落ちている」週刊少年ジャンプやジャンプコミックスなどの電子書籍を「拾って読む」ことができるサービスで、「いままで読む機会のなかった漫画に出会えた」と好評のようですね。

籾山:「面白い取り組みをやっているな」と注目いただいているのは、ありがたいことですね。『マワシヨミジャンプ』は、ジャンプ創刊50周年を記念して行われた「ジャンプアプリ開発コンテスト」の第1期入賞企画で受賞したミライアプリと共同で開発しました。僕たちが少年時代に味わった「ジャンプを町の中で手に入れる、あの楽しみ」を、いまの子供たちにも味わってほしいと思ったからです。

30代以上の方なら実感があると思うのですが、昔は学校で、友達の家で、電車の中で、町の定食屋で……といろんなところで少年ジャンプに触れる機会が多くありました。いわば日常の風景の中にジャンプが溶け込んでいた。ところが最近は、街中でジャンプを目にする機会がずいぶんと減ったなと、寂しい気持ちを覚えています。

もちろん、いまはスマホでもジャンプが読めますし、単行本で漫画を読むという人も増えているから、悲しむことではないかもしれない。でも、「誰かからジャンプが回ってくるあの感覚」を、次の世代にも引き継ぎたいな、と。そこで、アプリ会社と組んで「マワシヨミジャンプ」を開発しました。

反応は上々ですし、『週刊少年ジャンプ』というメディアが決して保守的ではなく、新しいことにも積極的に取り組んでいくんだという姿勢を見せる意味でも、効果があったと思います。「ジャンプもそういう『遊び心』に理解があるんだ」と知ってもらうことで、ジャンプに対して新しいアイデアを提案してくれる人が増えてくれることに期待しています。

胡坐をかいているわけにはいきません。常に新しいことを世の中に発信していくことで、ウェブの世界でもジャンプの存在感を大きくしていきたいと思っています。

ヒットの基準

――そんななかで籾山さんがいま心血を注いでいるのが『少年ジャンプ+』です。『週刊少年ジャンプ』の電子版やジャンプコミックスの電子版が購入できるといったサービスに加えて、ジャンプ+だけのオリジナルの連載作品が読めるというのがウリですが、目標や現状などを教えてください。

籾山:『少年ジャンプ+』がいま目指しているのは、面白いヒット作を生み出し続けるメディアになること。この一点につきます。

「ヒット作」というと基準があいまいですが、目指しているのはちょっとしたヒットではなくて、日本中の全員が知っている、ぐらいのものです。

『週刊少年ジャンプ』が600万部以上売れていた時代って、学校や家でジャンプを回し読みしたり、立ち読みしたりというのを含めたら、たぶん1000万人、もしかすると2000万人くらいの人が『ドラゴンボール』を毎週読んでいたと思うんですよ。

これが漫画作品のひとつの「限界値」であると捉えていて、そこまで到達すれば『ジャンプ』という媒体が漫画雑誌を超えた巨大なメディアになる。すると、才能のある作家さんが「絶対そこで描きたい」と言ってくれるような求心力を持つようになるんです。そういうメディアを、スマートフォンの世界でも作りたい。それが一番の目標です。

『少年ジャンプ+』はすでに1000万ダウンロードを突破していて、現在は60を超えるオリジナル作品を連載しています。

データについてもう少し話すと、これまでの累計売上は120億円以上、アプリとブラウザを足したWAU(ウィークリーアクティブユーザー)は250万以上、とまずまず納得のいく結果を残しています。面白くて売れている作品も出ている。少しずつ広がっている実感はあるんですが、目標からすると、道半ばだと思います。本誌は本誌で盛り上がってほしいと思う一方で、『少年ジャンプ+』もそれと同じかそれ以上のものにしたいですね。