働き方改革の弊害を打破するためには、「二正面作戦」が必要だ

「名ばかり正社員」を防ぐためにも
竹信 三恵子 プロフィール

経済界には、さらに先を行く「同一労働同一賃金」案もちらつき始めている。

大手派遣会社のトップが、「今回の『働き方改革』では仕事の中身を見ていない」と、国際基準に沿うかのような発言をしたうえで、「正社員と派遣社員の職務を小分けにして一つ一つに値段をつけ、正社員も含めて、それを合計したものを賃金とすれば本当の同一労働同一賃金になる」と語っていたとの情報も寄せられているからだ。

国際基準は、「公正な中立機関」が仕事を分析してそれぞれに「点数」をつけて比較することで現行の賃金格差の不合理性を客観化し、差別や偏見を是正するという考え方だ。

一方、この派遣会社トップの案は、「雇い主」が分析した仕事のそれぞれに「値段」をつけて合計したものを賃金として払うとするもので、これはノーワークノーペイ、休んだらゼロの出来高払い制への、正社員も含めた賃金制度全体の大転換だといっていい。

もちろん、これがすぐに実現するわけではない。だが、「同一労働同一賃金」の経営側からの新手のすりかえ論の登場として、警戒が必要だ。

 

「二正面作戦」で行こう

「働き方改革は、8時間で帰れる社員の権利」と「死ぬ寸前まで働かせてもいい会社の権利」を並立させ、残業を「なくす」のでなく「高プロ」によって残業時間を「見えなく」させた。

また、働き手が仕事内容に沿った賃金を求めるときの支えのはずの「同一労働同一賃金」は、会社の仕事評価への裁量権の支えとしての「日本型同一労働同一賃金」になった。そして、これを出来高払い制度にすり変える発言も出始めている。

こうした現実を前に、私たちは二つの態度を取りがちだ。ひとつが、「いいところ」もあるのだから批判するのはおかしいという態度。もう一つは、どうせ建前にすぎないのだから相手にしないという態度だ。

結論から言うと、二つとも間違っている。

「いいところ」は、「過労死や非正規問題をなんとかしろ」と言う働き手たちの要求の成果だ。とすれば、その成果をフルに生かし、100時間以上の残業がないよう労使協定を見直し、「高プロ」に同意せず、手当や賞与で非正社員が取れるはずのものはどんどん請求していくべきだ。

ただ同時に、大局の「悪いところ」を逃げずに批判し、働き手のネットワークづくりや身近な労組を生かすことで、法制度の再改正への取り組みをここから始める「二正面作戦」が必要だ。それが「名ばかり正社員」を防ぎ、企業ファーストの「改革」を働き手ファーストへと転換させる最初の一歩になる。

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