アレルギーについてわかってきた「常識を覆す意外な事実」

これは、新しい時代の大きなテーマだ
尾崎 彰一 プロフィール

なぜ兄姉がいる子供の方がアレルギーが少ないのか

アレルギー疾患に関して、兄弟姉妹の⽣まれた順番で、差があることが以前から⾔われていた。イギリスの疫学者デイビッド・ストラッチャン(DavidStrachan)教授が1989年に発表した論⽂の内容が興味深い。

1958年のある1週間に⽣まれた1万7千⼈の記録を調べ、⼤⼈になるまで追跡調査をした。アレルギーの発症において、幼年期の影響を特定しようとしたのだ。

その結果、23歳の時点で、花粉症⼜はアトピー性⽪膚炎を発症している確率と、最も強い関連性が認められた要素は、なんと「11歳の時点で、家庭内に年上の⼦どもが何⼈いたか」だったというのだ。

この兄弟(姉妹)の影響はとても顕著で、第⼀⼦では20%になんらかのアレルギー症状があるのに⽐べ、第三⼦では12%、第五⼦では8%にまで下がるという。

デイビッド・ストラッチャン教授は、この結果を説明する上で考えられることは、幼年期の感染症にかかる確率が⾼いからだろうと推測している。つまりは、家庭内の⼈数が多いほど、様々な細菌やウイルスなどに感染する機会が増え、免疫機能が適切に働くというのだ。

また兄弟姉妹が多いほど、毎⽇の⽣活の中で微⽣物のやり取りが多くなる。このやり取りが、定着する微⽣物の割合を変え、免疫系の発達につながると考えられる。

⾼度成⻑以降、核家族化が進み、その上、現在の⽇本では⻑らく少⼦化が続いている。核家族化や少⼦化の影響が、定着する微⽣物の多様性や、免疫の発達にまで影響を及ぼしているとなると、影響の範囲の広さに驚くばかりだ。

 

アレルギーを誘発する現代の⽣活

近年、子供でも花粉症が当たり前になった。アレルギー反応を抑制する側の免疫細胞が少ないために、花粉という物質に対して過剰に反応してしまうのだ。幼いうちに調整されるべき免疫系の調整が、現代では難しくなってきている。

ひとつの例として、ベトナム農村部の⼦どもたちを対象にした⼤規模な実験で、寄⽣⾍の駆⾍をしたことで、アレルギー疾患のリスクを⾼めてしまうという結果が出ている。

ベトナムの農村部では、今までほとんどアレルギー疾患はみられなかった。これは寄⽣⾍感染によって、免疫が発達し、免疫の調整機能が適切に働いているからだと言える。そのバランスの取れた状態から寄⽣⾍が突然いなくなると、免疫の調整機能がうまく働かなくなり、⼀気にアレルギー症状を引き起こす⽅向へ向かってしまうのだ。

現代の都市部の⽣活から推測するに、第⼀に多様な微⽣物と接触する機会が減っていることが⾔える。⾃然の中で育った家畜と、清潔で近代的な環境で飼育された家畜とでは、⾃然の中で育った家畜の⽅が、免疫制御に関わる遺伝⼦の発現が多いことが分かっている。

これは⼈間にも当てはまることで、都市部の環境で育てば、制御する側の免疫細胞は少なくなり、アレルギー反応を起こしやすい体質になる。そしてそれが、⼆代三代と都市部で⽣活する親⼦間で進んでいくとなれば、よりその傾向が顕著に表れてきてもおかしくない。

免疫という生命維持に欠かせないシステムの制御不能が、今後私たちの身体にさらなるどんな異変をもたらすのか、次の半世紀、もっと高い壁として立ちはだかるかもしれない。